窪田正孝の包み込むような優しい表情！松岡茉優との掛け合いもナチュラルに演じた映画「愛にイナズマ」

空気は読めないがやたら魅力的な正夫を窪田正孝が演じる。近年では映画「ある男」(2022年)の演技が高く評価されるなど、幅広い役柄を演じてきた窪田も松岡と同じく実力派だ。

繊細で不器用な正夫も社会の理不尽さに打ちのめされてきた。心許せる友人を亡くしてさらなる絶望を味わうが、花子とともに理不尽に抗い、戦っていく。家族の記憶がない正夫は、花子の父や兄と関わるうちに家族を知る。その佇まいも松岡との掛け合いも自然で、歪な家族を包み込む優しく穏やかな表情にも惹き込まれた。

ダブル主演を務めた2人の他にも、日本映画界を牽引する俳優陣が出演している。妻に愛想を尽かされた父・治は佐藤浩市が演じ、主演の2人を支えながらも確かな存在感を放つ。池松壮亮は口だけがうまい長男・誠一を好演し、今クールのドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」で圧巻の演技が注目されている若葉竜也が、真面目ゆえにストレスを溜め込む次男・雄二役を務めた。

父と兄たちは戸惑いながらも花子に協力し、カメラの前で少しずつ隠していた本音を見せ始める。彼らの生き生きとしたリアルなやりとりに惹き込まれ、温かく笑えて切なく涙を誘う。他にも益岡徹や北村有起哉、MEGUMI、三浦貴大、仲野太賀ら若手からベテランまで演技派が出演。石井監督が高い熱量で書き上げた脚本に応える彼らの確かな演技力が、見応えある作品を作り出していた。

文＝中川菜都美

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