田中圭オードリー・若林正恭の「タサイさ」のマリアージュが涙を誘う舞台「芸人交換日記」

田中は、「芸人のやることじゃない」と言ってバイトはせず彼女の家に転がり込み、彼女から小遣いをもらって生活している甲本を好演。まっすぐで短絡的だが、なぜか憎めない愛嬌抜群のキャラクターとして演じており、"ダメダメなクズ"でありながらも、嫌悪感を抱かせないかわいらしさを絶妙な塩梅で、痒い所に手が届くようにしっかりとツボを押さえて表現している。子供がそのまま大人になったかのような、周囲を巻き込んでいく勢いと直情的な感情表現を役のアイデンティティーとしながらも、締めるところは締める緩急のある演技で、観る者の涙を誘ってくれる。

そんな中で特筆すべきは、田中圭の"多彩さ"だ。甲本はさまざまな感情を素直に出しながら竜巻のように力強く相方を巻き込んでいくのだが、その感情表現のグラデーションが見事。後輩への嫉妬や焦り、芸人としてのプライド、人としての矜持、一人の男性としての在り様、相方への思いなど、物語の"動"の部分を一身に背負って、"多彩"な演技で作品の屋台骨を構築している。

対して若林は、根暗だがお笑いの才能にあふれた田中役を演じている。竜巻のような甲本を、時にいなし、時に制し、時に背中を押しながら、お笑いの世界に誘ってくれた甲本との「イエローハーツ」の漫才を作り上げることに情熱を注いでいく青年を、静かに燃える青い炎のように表現。物語の"静"の部分を担当し、観る者の心の隙間を照らし出す役割を果たしている。

そんな中で触れずにはいられないのは、若林の"多才さ"だ。甲本と田中は直接的な会話はなく、基本的に交換日記を介して会話するという設定になっており、舞台上、上手の甲本の部屋と下手の田中の部屋の境となる、中央に置かれたポストに交換日記を置き合う動きをしながら会話劇を展開していくのだが、相手がノートを開いている間は自分のせりふを話すという高度で忙しい芝居の中、しっかりと間を外さずに田中と渡り合っている。しかも、会話劇ではツッコミのような立ち位置でありながら、漫才のシーンではボケを演じるなど、本職のツッコミの域を超えた才能を垣間見せてくれている。

「ほぼ2人芝居」といってもいいほどに2人の掛け合いがメインとなっているのだが、田中の"多彩さ"と若林の"多才さ"のマリアージュによって紡がれるストーリーは必見。2人の"タサイさ"に注目しつつ、夢を抱いたことのある人なら誰もが刺さるであろう、作品が伝えるメッセージを受け取ってほしい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

芸人交換日記(舞台)
放送日時:8月7日(水)20:00~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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