昔々あるところに桃の木村という平和で美しい村があった。だが、この村には老人と女性ばかりで、鬼ヶ島からやってくる鬼たちに度々略奪を受けて困っていた。そんな中、村から少し離れた水車小屋におじいさんとおばあさんが住んでおり、ある日おばあさんが川へ洗濯に出かけると大きな桃の実が流れてくる。持ち帰ったおばあさんがおじいさんと一緒に食べようとすると、中から赤ん坊が出てくる。その子はやがて桃太郎という名の立派な青年に育ち、村の娘たちのあこがれの的となる。そんな桃太郎の姿を、鬼ヶ島の宮殿から水晶を通して大王の息女が見つめていた。
誰もが知っているストーリーながら、鬼の姫の恋などオリジナル要素も満載で約90分があっという間なのだが、中でもひばりの存在感が圧巻。歌のシーンでは格別な歌声が作品に美しい彩りを与えているし、演技においても心優しく勇気あふれる主人公を好演。女性でありながら美青年として劇中を生きている。
それを可能にしているのは、彼女の持つ超越した存在感に他ならない。低いトーンの声、ハキハキとした口調、キビキビした身のこなし、背筋が伸びて堂々とした立ち居振る舞い、華麗なアクションなど、芝居の細かい部分も少なからず寄与しているのだが、登場しただけで色づいて見えるオーラが、「桃太郎」らしさを具現化させている。
榎本健一や岸井明、川田晴久、堺俊二など豪華な喜劇役者も出演しているのだが、画面の中に立っているだけでひばりは誰よりも輝いている。「この存在感が出るのは、今の演劇界で何人いるだろう」とふと考えてしまうほどだ。白黒映画だからと"食わず嫌い"することなかれ。白黒だからこそ明瞭に感じられるひばりのオーラが形成する存在感をぜひ感じてみてほしい。
文=原田健
放送情報【スカパー!】
宝島遠征
放送日時:10月6日(日)20:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
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