まずは、高橋が演じる岳について見てみよう。学食で同級生の魚見亜由(白石聖)と会話しながら調理する岳は、ごく普通の高校生といった印象だ。遠慮がちな喋り方には純朴な雰囲気があり、フライパンを返す時の表情にはひたむきさが感じられる。そして突然現れ、岳のナポリタンを奪って食べた海に頭をごしごしと撫でられる姿は、もう「かわいい!」以外の何ものでもない。
純でひたむきな人物を体現するだけでなく、高橋の容姿が加わったことで、本作の"北田岳"は非常に魅力的なキャラクターとなっているといえる。さらにこの物語のポイントは、岳が「数学の知識とセンスを活かし斬新な料理を生み出す」ことにあり、海が経営するレストラン「K」で働き始めてからも、岳は数多くの印象的なシーンを見せてくれる。
第2話で、野菜の下ごしらえや皿洗いを必死に、前向きにこなしていく。まかないを作り、店のスタッフ全員に認めてもらえるかのテストでは、スタッフの高評価に泣きそうなほど喜んだり、しかし合格点がもらえず焦りと混乱に陥ったりと、料理の道に踏み出した岳が奮闘する姿を、高橋はイキイキとした演技で伝えてくれる。
■カリスマシェフを演じる志尊のさすがの"風格"
志尊が演じる海は、常に揺るぎない自信に満ち、堂々とした振る舞いを見せる、まさに"若き料理界のカリスマ"。動じない視線、落ち着いた声音とセリフのテンポによってその人物像を際立たせる様は、志尊の俳優キャリアが舞台からスタートしたことを思い出させ、その風格もさすがと言える。
岳の頭をごしごしするシーンでは、海に風格があるからこそ岳が可愛く見えるし、その後、自らナポリタンを作って岳に食べさせるシーンでは、含みのある瞳で岳を見つめミステリアスな空気を漂わせたりもする。厨房で味見する時の集中力に満ちた表情は常にかっこいいし、第4話で岳の耳に「プロになれ」と囁く時の声は、思わずゾクっとくるほどだ。
本作の魅力は、高橋と志尊がそのキャラクターを十二分に演じ、同時にそれぞれが持つ魅力が存分に発揮されているところにあるといえる。第3話でお店のスタッフ・乾孫六(板垣李光人)とのわだかまりが溶けて、初めて名前で呼んだ時の岳の照れと喜びが入り混じった絶妙な表情。第5話で「なんなんだ...」と呟いた海の、苦々しさと熱さとかっこよさが混在する心に刺さる表情。魅力溢れる演技を見せる2人の共演には、最終話まで一気見させるほどの力があるし、それは高橋と志尊のW主演でなければ生まれなかっただろう。
高橋と志尊だけでなく、「K」のスタッフの赤松蘭菜を演じる小芝風花、海の師匠である渋谷克洋を演じる仲村トオルなども、それぞれの役にあった秀逸な演技を見せてくれる。果たして岳と海は、"料理の真理"に辿り着くことができるのか。素晴らしいキャストたちの演技に引き込まれながら、最後までじっくりと楽しんでほしい作品だ。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
フェルマーの料理
放送日時:2024年10月12日(土)11:00~
チャンネル:TBSチャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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