2話以降も、新たな依頼人が続々と登場して佐伯が調査をするのだが、彼は姉を殺した3人の犯人たちを勝手に調べていく。そのひとりでラーメン店を営む田所(三浦誠己)が、過去の事件をネタにもうひとりの犯人・寺田(山中崇)に強請られていることがわかる。佐伯の協力者として、田所が執心するキャバクラ嬢のはるか(新川優愛)が登場するのだが、彼女の存在も物語後半の大きな軸となっていくので興味深い展開だ。終盤では新たな依頼人として鈴本弁護士(柄本明)が登場するが、彼こそ姉を殺した主犯格・榎木(浪岡一喜)の弁護を担当していた弁護士であることが分かる。過去のトラウマに捕らわれて苦悩する佐伯が、犯人たちと対峙した時に自分の怒りの感情をどうするのか、それが物語を通しての核になっている。過去の事件が重苦しいだけに、苦悩する佐伯に感情移入して視聴者としても辛い感情になる場面も多い。ただ、それだけ重厚で骨太なドラマは近年では貴重であり、犯罪被害者や加害者家族の心情なども大いに考えさせられる。
最終話では、復讐か、赦しか。気持ちが揺れるままに佐伯は榎木と対峙する。感情がさまよう中で佐伯は、図らずも榎木への復讐を果たす、ある究極の手段を思いつくのだが...。物語の後半では佐伯に想いを寄せるキャバクラ嬢・はるかも心に大きな傷を負っていた辛い過去が明らかになり、全体的に重厚な雰囲気に包まる。そんな中で、救いとなるのは探偵事務所の女性スタッフ・染谷(板谷由夏)の存在だ。軽妙な口調で所長や佐伯に軽口を叩く一方で、時に心配りを見せて彼らの支えにもなっている。
松重の演技力にもうなる。序盤での軽い演技から一転し、後半では佐伯を調査員にスカウトした理由も語られるが、表現力が抜群で短いセリフにも味があるのだ。彼の俳優としての力量に視聴者は改めて気づかされるだろう。松重の確かな演技力があるからこそ、主役の東出も生かされているという印象だ。
重厚なテーマを扱うだけに、毎回苦いストーリーではあるが結末には感動的なラストシーが用意されているので、筆者のような涙腺の弱い方はご注意願いたい。WOWOWの連続ドラマWには、地上波のドラマとはひと味違う見ごたえ十分の作品が数多い。本作もそんな例に漏れない力作であることは間違いない。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
連続ドラマW 悪党~加害者追跡調査~
放送日時:11月18日(月)22:45~
放送チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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