渡哲也が表現する無頼な主人公の心理の屈折から見る役者の本質

(C)東映

深作監督の力強い演出やカメラワークによるところもあるのだが、黒岩の"思うように正義を貫けず息苦しさを感じる中で、だだ洩れてくる情熱"が心を打つ。ヤクザと警察上層部の癒着を知り、心が荒んでいくさまや反権力の組織の中に身を落としていく心理の屈折が、そこはかとない切なさを感じさせ、何とも言えない哀愁があふれているからだ。この"荒々しさ"と"切なさ"が同居する瞬間こそが、"無頼"につながっており、誰にも頼らず一人で戦う強い漢でありながら、哀愁が漂い弱くも見える。視聴者はそこで目が離せなくなるのだ。

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そんな中で、飲み屋のシーンで意に沿わないことを言われている時の黒岩の"首を折って下を向いて聞いている姿"は必見。動きはなく、せりふもないのだが、黒岩自身の心の中が演技によって雄弁に語られているのだ。動きでもせりふでもなく、体から醸し出るオーラで役の心情を表現する渡に、役者の本質を垣間見ることができる。

大門刑事のイメージが強い方々には特に"無頼"な渡に新鮮味を感じていただきながら、彼が持ち前の表現力で表した役の心理の屈折に心震わせつつ、役者の本質についても考えを巡らせてみてほしい。

文=原田健

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