この映画の"土台"となっているのは、やはり若松孝二という監督の人間力であろう。劇中でも語られているが、ある理由から"怒り"が映画作りの原動力となっていた監督は、反体制の旗手として、スキャンダラスで情熱的な作品を次々と生み出していた。しかし、学生闘争などが起きていた時代、過激過ぎるものは排除されていく傾向にあった。映画でも描かれているが、せっかく作った大量のポスターを街なかに貼れず、巨額の印刷代を無駄にする一幕も。そんな時にお金を稼ぐために始めたのが、連れ込み宿で流す短い"ピンク映画"だった。評論家や世間からエロ映画とばかにされることもあったそうだが、監督らはエネルギッシュに前進していく。
そうして、映画が持つエネルギーや映画作りの面白さを知っためぐみは、監督を夢見るようになるが、自分がどんな映画を作りたいのかが分からずに悩む。だが、そんな葛藤を抱きながらも若松監督の元、がむしゃらに撮影に挑む姿を演じる門脇は凛々しく、頼もしい。恐らく、監督も一緒に働くスタッフも同じように感じていたのだろう。助監督として成長していく姿をみんなも頼もしそうに感じているように見える。しかし、当のめぐみは新たな悩みを抱え、一方の若松監督は新たに撮りたい題材にたどり着いた時、事件が起きてしまう...。
めぐみを中心に映画作りに向き合う人々の悲喜こもごもと、反体制的な時代のうねりを映し出した映画は、格差が強まる現代を生きる人々の心にも響くはずだ。エネルギーを持ちながらも悩み続ける若者を演じた門脇に注目しながら見てもらいたい。
文=及川静
放送情報【スカパー!】
止められるか、俺たちを
放送日時:11月1日(金)21:00~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
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