池松壮亮の俳優としての力量が作品のメッセージに説得力をもたらす!時代劇「せかいのおきく」

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下肥買いとして農村の肥料となる糞尿を運ぶハードな日々を送っている矢亮は、紙屑屋だった中次に懐かれ、やがて2人は相棒のような関係になっていく。身体に染み付いた臭いにみんなから鼻をつままれる仕事だが、大雨が降った長屋の道から溢れる屎尿に住民たちが閉口する中、矢亮たちは疎まれながらも江戸の庶民の助っ人として活躍する。中次に"あにい"と呼ばれている矢亮の口癖は「笑うとこだぜ」で、ジョークは主に糞にまつわることが中心。「どいつもこいつも上からもの入れて下から出す。誰だってそれだけのもんさ」など、いわゆる格差社会を鼻で笑って吹き飛ばすセリフには妙な説得力がある。声を失ったおきくと中次の淡いラブストーリーが描かれる中、池松の存在が本作のメッセージを伝える刺激的なスパイスとなっている。

■糞まみれになってもかっこいいと思わせる俳優としての力量

本作が歴史に詳しくなくとも青春群像劇として楽しめる理由の1つは、矢亮と中次の凸凹コンビによる軽妙なセリフのやりとりにある。江戸育ちでイケメン、仕事は半人前だが、おきくにも好かれている中次。一方で身寄りもなく、毎日を必死で生きている矢亮。肥料を運ぶ荷車が道の途中で壊れてしまい、走って運ぶことになったりと珍道中の中、時には言い合いに発展する2人のやり取りはまるでお笑いコンビのようでもある。

世の中への不満や嫉妬、寂しさを抱えて、それでも野望は捨てていない矢亮を演じた池松は、糞まみれであってもかっこいい。そして本作の魅力の1つは物語と同時に、自然の美しさが際立つ作り。真っ白な雪が降り積もるおきくと中次のシーンはもちろん、雨の音や川の柳が風に揺れる音も心を癒す。

人間と自然の共存をさりげなく描き、逆境の中で生きていく3人の若者の強さとやわらかな心を感じさせる本作。池松の存在が頼もしくもある作品だ。

文=山本弘子

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放送情報【スカパー!】

せかいのおきく
放送日時:2024年11月8日(金)22:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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