コラムニスト・吉田潮池松壮亮主演ドラマ「宮本から君へ」を推す「世知辛さがイイ!」

「宮本から君へ」より
「宮本から君へ」より

スマートな働き方が推奨される今だからこそ、あえて真逆をいくドラマ「宮本から君へ」をお薦めしたい。

主人公は文具メーカーの営業マン・宮本浩。おべんちゃらひとつ言えず、常に直球。人にも自分にも嘘をつけない不器用な男だ。駅でひとめ惚れした女性(華村あすか)には振り回され、愛想笑いの営業も客に見透かされ、何ひとつうまくいかない。売りは直情と熱血のみ。

そんな男を池松壮亮が熱く演じる。劇中、冬の海にパンツ一丁で飛び込むわ、バリカンで頭丸めるわ、道端でローリング土下座して流血するわで、体を張った熱演だ。「暑苦しいのは苦手」という人にも、これは亜種だと強調しておこう。何せ、池松が気の毒なくらい、うまくいかないから。  

地を這い、泥水をすすり、歯を食いしばって辛酸を舐めても、結果を出せず。主人公がこんなに報われないのも珍しい。日本のドラマは苦難を乗り越えた先の成功や栄光を綺麗事で描くのが定番だが、これは別モノ。「ドラマみたいに世の中うまくいかねえわ!」と思っている人でも納得の世知辛さ。そこがいい。

「宮本から君へ」より

(C)「宮本から君へ」製作委員会

とはいえ、救いがないわけではない。宮本は人に恵まれている。全力で味方になってくれる先輩や取引先、口は悪いが悩みを受けとめてくれる同期。競合他社の嫌がらせはあるが、宮本の会社の人は皆まっとうで温かい。人としての正しさと、社会人としての在り方を問われ、悩みながらも前を向く。

たとえ負けてもカッコ悪くても、不幸じゃない。負けて得る経験値は貴重だし、汗も恥もかかない人生より、ちょっとだけ豊かになれると思わせてくれるのだ。

よしだ・うしお●1972年生まれ。ドラマ好きのコラムニスト兼イラストレーター。週刊誌や新聞でテレビ・ドラマ評を執筆。 時々テレビにコメンテーターとして出演。「くさらないイケメン図鑑」など著書多数。

文=吉田潮

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放送情報

宮本から君へ
放送日時:2020年1月19日(日)0:30~
チャンネル:ホームドラマチャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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