佐藤流司が舞台「呪術廻戦」・虎杖悠仁役で見せたメリハリのある演技

「ここで死んだとして、それは『正しい死か』」――開始から1分、主人公である虎杖悠仁の慟哭が響く中、舞台の背景に踊る「正しい死か」の文字。主演・佐藤流司の張りつめた表情から始まる、舞台「呪術廻戦」の幕開けだ。

本作は累計発行部数9000万部を超える芥見下々の同名漫画を舞台化したもので、2022年に東京と大阪で上演。人間の負の感情から生まれる化け物・呪霊を祓うために暗躍する呪術師の戦いを描く物語だ。

ストーリーは並外れた身体能力を持つ主人公・虎杖悠仁と呪術師たちとの出会いからスタート。呪いに対抗するための専門機関である「呪術高専」に編入した悠仁の初任務、そして強大な敵との戦いまで、おおむね原作漫画の流れ通りに展開する。

座長を務める佐藤流司は、ライブ・スペクタクル「NARUTO」シリーズのうちはサスケ役や、ミュージカル「刀剣乱舞」シリーズの加州清光役を演じるなど、2.5次元界の中心で活躍してきた。クールな雰囲気の役を演じることが多かったが、本作ではそれまでになかった快活なキャラクターに扮することになり、演じるにあたっては悩む部分も多かったという。

そんな彼が作り上げた虎杖悠仁は、明るく素直ながらも程よく力の抜けたキャラクターに仕上がった。漫画らしいハイテンションな演技の中にもふと漂う、淡白ながらもリアルな台詞回しと空気感。それでいて、ぼそりとつぶやくようなセリフでも、肝となる場面では悠仁の揺らぐ戸惑いや決意が底に流れていることがうかがえる。

一方のギャグパートでは振り幅を見せつつ、共演者たちの繰り出す濃度の高いコメディー演技を受け止めて舞台ならではの笑いを作り上げていることも印象的。物語が進み他のキャラクターと打ち解けるにつれてかわいらしい一面も覗きはじめ、彼特有の愛くるしい顔立ちが最大限の威力を発揮している点も見逃せない。

本作では主要キャラクターたちの歌唱シーンも見どころの一つ。佐藤は前半で2曲を披露し、どちらも感情のボルテージが最高潮に達する重要な場面となっている。

1曲目は、呪霊に襲われ窮地に陥った悠仁がある決断を下すシーンだ。切れ味のいいロックなイントロ、一点に集まるスポットライト、照らされる決意の瞳。演出もさることながら、バスの利いた声で歌いだし、脳天を貫くようなサビの高音へとまっすぐに突き抜けていく佐藤の歌唱力にただただ鳥肌が立つばかりだ。

そして2曲目は、悠仁が自身の無力さに打ちひしがれるシーン。物悲しいメロディーに乗せて力なく起き上がり、苦しみを吐き出すように哀切を込めながらもハリのある声で歌い上げる姿は、涙よりも強く胸を打つ。まさに舞台ならではの名場面といえるだろう。

演技に歌ときて、アクションも欠かさないのが万能たる佐藤の魅力。全編を通してバトルシーンが満載だが、特に終盤で訪れる敵との決戦は最大の見せ場だ。己の身ひとつで戦う肉弾戦はもちろん、悠仁の魂の叫びといえる最高密度の怒りに圧倒される。

本作は佐藤にとって演技に歌に立ち回りにとさらに磨きがかかっただけでなく、新たな役柄に臨む挑戦の1ページとなった。約1ヶ月にわたる公演期間のうち、TBSチャンネル2では2022年7月15日の初日公演の模様を中心に放送。彼が新境地を開拓する、その第一歩を改めて見返してみてはいかがだろうか。

文=本永真里奈

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放送情報【スカパー!】

舞台「呪術廻戦」
放送日時:5月3日(金)20:30~
放送チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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