松本若菜が確かな演技力で物語の人間模様を彩る!映画「大綱引の恋」で放ったナチュラルな存在感

物語は、令和元年6月から始まり、9月に行なわれる"大綱引"の三役の候補を決める時期。三役とは一番太鼓、大将、押大将のことで、上方、下方の各陣営を指揮する中心的存在となる。かつて武志の父・寛志(西田聖志郎)が、典子の父・喜明(升毅)と共に三役を務めたことがあり、武志にも三役、特に寛志と同じ一番太鼓への期待が高まっていた。
しかし寛志は、東京に出て働いていた武志を「一度、鳶も綱も捨てた男」として、一番太鼓となることを認めない。さらに武志の母・文子(石野真子)が、突然、家事と仕事から引退すると表明し、有馬家は混乱に陥る。

そして7月、買い物帰りの寛志とばったり出会ったのが典子だった。典子はTシャツにジーンズというラフなスタイルで、買い物袋を法被で隠そうとする寛志を驚いたように見つめたり、「いやいやいやいや」と言いながら法被の裾をめくったりする。
寛志と会話しながら町内を歩く時の笑顔は親しみに溢れ、離婚の報告をする時はピシッと背筋を伸ばす。また寛志との別れ際に娘が敬礼した時は、ほのかに幸せそうな微笑みを見せる。何気ないシーンではあるが、そんな典子の様子からは、明るくて屈託がなく、周囲の人々や娘を大切に想う人物であることが伝わってくる。

また、持ち前の容姿で存在感を放ちつつも、演技はとても自然に感じられ、町内の空気に違和感なく溶け込んでいる。それも、松本がしっかり"中園典子"になりきっているからだろう。

■自然体で表情豊かな典子の存在が物語の人間模様を彩る

そんな典子には、実はある想いが胸にある。祭りの一番太鼓が武志以外の者に決まった後、典子が武志を呼び出して神社で会う。へたばる武志の手を引いて階段を登ったり、口をすすいだ柄杓を武志に渡して「間接キス」と言ってみたり、典子はイタズラっぽい姿を見せつつ、強い口調で三役になれなかった武志を励ます。

そして神主に怒られて神社を去る時、典子のほうから手を差し出して、階段を降りるのだ。そんなシーンからは、典子が武志に想いを寄せていることがうかがえるし、松本がそんな典子を表情豊かに自然に演じているため、武志とのシーンがユニークで印象深いものとなっている。

本作では武志とジヒョンの恋模様、また、有馬家の家族模様なども描かれるが、情景と物語に溶け込んでいる典子の存在によって、全体の人間模様がより豊かなものになっている。それを演じきった松本の力量はさすがだと言えるし、なればこそ、最後の"大綱引"にすべてを懸けて臨む武志の姿、それを応援する典子の姿が映えるのだ。

それぞれが想いを持って臨む"大綱引"は、どんな結末を迎えるのか。松本若菜を始め、それぞれの熱演、また勇壮な"大綱引"の熱気を味わいながら、じっくりと本作を楽しんでほしい。

文=堀慎二郎

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放送情報【スカパー!】

大綱引の恋
放送日時:2024年11月18日(月)20:10~、2024年11月29日(金)9:15~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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