役所広司の表現力が際立つ時代劇！人間味あふれる演技で存在感を発揮した映画「最後の忠臣蔵」

重い覚悟を胸に使命を果たすべく生きてきた苦悩と葛藤、寡黙で不器用な男の忠義を、役所が繊細に表現している。生き残ってしまった労苦が刻まれた顔、武家の娘として時に厳しくも大切に育ててきた可音へ向ける慈愛に満ちた眼差し、そんな我が子のような娘と彼女への複雑な思いを手放さなければならない胸の痛み...。

身分も名誉も捨てて生きろという過酷な使命を秘め、罵られても盟友に問われても真実を口にしない。それでも武士としての矜持を失わず、その生き様で体現しながら、人間らしい一面も垣間見せる。多くは語らぬ役所の万感の表情に、熱いものが込み上げた。

世紀の大事件"忠臣蔵"の後日譚。密かに生き残った2人の男の知られざる物語を描く本作で、役所は心震わす熱演を見せた。役所のほか、英雄になれなかった死に損ないとして生きる吉右衛門役の佐藤浩市も、忠義という絆で結ばれた盟友に負けず劣らずの熱演を披露。可音役の桜庭ななみも愛らしくも凛とした美しさを見せた。

他にも山本耕史、伊武雅刀、風吹ジュン、田中邦衛、笈田ヨシ、安田成美、片岡仁左衛門ら豪華キャストが共演。そんな中でも人間味あふれる演技で存在感を発揮している役所だが、本作には彼の名優たる理由が詰まっているようだった。

文＝中川菜都美

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