黒船が来航し、幕府の在り方に疑問を抱いていた榮一は同じ志を持つ喜作(武田)と共に長七郎(Char)がいる江戸に向かう。倒幕の運動資金を集めるためにみんなで井戸掘りをしていた時にその度胸に目をつけたのが後に将軍になる一橋慶喜の用人・平岡(田村)。「使ってやってもいい」と言われ、お調子者の榮一は咄嗟に「是非とも」と答えてしまい、喜作に呆れられる。しかし、倒幕計画の一環で濡れ衣を着せられ役人に追われる身となった榮一と喜作は逃げ道がなくなり、期せずして慶喜(片岡)の家臣になり、幕府側の人間になってしまう。尊王攘夷の思想を持ち続けている喜作はジレンマに苦しむが、池田屋事変も勃発する中、人の血が流れるのを憂い、百姓の出であることを隠さない榮一は喜作が止めるのも聞かず、「物事はやってみなきゃわからん。人には会ってみなきゃわからん」とウィンクし、西郷隆盛に逢いに行く。侍の世の終わりを察知し、好奇心と柔軟な発想で突き進む主人公を西田が好演。故郷に帰るたびに千代に「すまん、すまん」と、江戸や京都に飛んでいってしまう軽やかな演技も西田らしい。
■西田と武田の熱演がその後の俳優としての躍進を予感させる
榮一は将軍になった慶喜に万国博覧会が開催されるフランスに行ってくるように命じられ、青春期の熱い夢を失くしてしまった榮一に喜作は絶縁を言い渡す。フランスで民があってこそ国であることを学んだ榮一が帰国したのは明治元年。新政府の大蔵省に呼ばれることになるが、資金はなく、民に負担を強いる政府に榮一は疑問を抱く。そんな時に幕府に刃向かい囚われの身だった喜作が戻ってきて、百姓のための幕府を作るという初心を忘れたと榮一に怒鳴る。髪を振り乱して取っ組み合いになる場面は西田と武田の熱演が印象的だ。選んだ道は真逆のように見えて、描いているものは同じ。榮一は大蔵省に辞表を出し、民のための銀行を作ると決意する。政府とのやりとりは今の時代に照らし合わせてもリアルで、西田演じる澁澤榮一に魅了される。
文=山本弘子
放送情報【スカパー!】
雲を翔びこせ
放送日時:12月22日(日)22:00~
放送チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
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