宮崎が演じたえんは、算哲が設問を解きに訪れた神社で出会う。縁談を断り続けていたため、神社に行儀見習いに出されていたというえんは、実に表情豊かだ。設問に夢中になり、掃き掃除の邪魔になっている算哲を困ったように見つめ、また、登城のために慌てて去る姿を不思議そうに見送り、忘れ物をして慌てて戻った算哲に愛らしい笑顔を向ける。
えんの兄が塾を開いていたことがきっかけで、その後2人は再会し、緩やかに気持ちが近づいていく。北極出地で遠征している算哲からの手紙を読む時の笑顔や、兄に算哲との結婚を問われた時に見せる気が有りそうだが迷っている様子、すぐさま「ご自分の嫁子に心配をなさってください」と言い返す時の強い眼差しなど、えんは常に芯があり、明るい空気に満ちている。
算哲がえんに惹かれることも納得できるし、そういった女性をしっかり演じられるのも、宮崎の演技力と、宮崎自身が持つ愛らしさがあってこそだろう。
暦の修正、作成は一筋縄ではいかない大事業で、正確さが求められるのはもちろんのこと、古来より暦を司ってきた朝廷の妨害もある。物語は山あり谷あり、算哲の師匠の死や、結ばれた2人の仲睦まじいシーンもあれば、算哲が命を賭けて新しい暦を世に広めんとする場面もある。
そしてどのシーンでも、岡田、宮崎ともに、自然で、魅力的な演技で物語に惹き込んでくれる。特に、結婚を決めた2人が縁側で語り合うシーンは、胸に強く残る名場面と言えるだろう。岡田と宮崎、2人の心のこもった演技を、ぜひ本作で堪能してほしい。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
天地明察
放送日時:2025年1月11日(土)16:00~
チャンネル:WOWOWプラス
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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