
(C)2020 KSCエンターテイメント
平岡演じる良一は、大阪の信用金庫で働いており、プライベートでは公務員の恋人と結婚の約束をするなど、一見充実した日々を送っているように見えるのだが、実は家業であるレンコン栽培が嫌いで、家業を継ぎたくない一心で就職したという過去がある人物。しかし、父が倒れたことにより、見ないようにしていた家業と向き合わなくてはならなくなるところから物語がスタートするのだが、良一の、一度にさまざまなことに見舞われて複雑な心境のまま現実と向き合っていくという"人間ならではの複雑性"を、平岡は見事に表現。
仕事で融資を断らなければならないという辛さ、家業をどうすればいいかという悩み、結婚目前というタイミングで恋人にどう現状を説明するかという迷いなど、誰しもが経験する"突然のマルチタスク状態"に見舞われた良一を、何ともいえない表情や、いっぱいいっぱいでつい感情的になってしまうところ、さまざま思惑と気遣いが入り組んだ他人との会話などで、人生の岐路にぶち当たって切羽詰まっている一人の人間を丁寧に演じている。
そんな中で、特筆すべきは栗山とのかけ合いのシーンだ。栗山演じる恵子は、"女性が前向きに農業に進出する社会づくり"を目指し、その一歩として金沢のレンコン農家の視察にやってくるという、フットワークが軽く、周りを巻き込みながら物事を進めていくパワフルガールで、そんな恵子と出会ったことで、良一の環境は良くも悪くも変わっていく。

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ちょっと強引で厚顔な恵子に、良一はある時は苛立ち、ある時は背中を押されながら人生の選択をしていくのだが、栗山は繰り出す"攻め"の演技に、平岡の"受け"の演技は絶妙で、作品のリズムだけでなく、"見え方"までもコントロールしている。
例えば、恵子のずけずけとプライベートなことにまで首を突っ込んでくる栗山の芝居に対し、平岡は「言いづらいが言うのは嫌ではない」という心情をにじませた芝居で応戦。ここでは、少しでも迷惑そうな雰囲気が出てしまうと、恵子が嫌な人物に見えてしまう可能性も出てくるため、"受け"側の芝居如何で"攻め"側の見え方までも左右してしまう。つまり、「どう見せるか」「観る者にどう受け取ってもらうか」は"受け"側が担っていることが多いのだ。これこそが助演の難しさでもあるし、演者にとってのやり甲斐にもつながるのだが、平岡の芝居は「見事」のひと言に尽きるし、栗山は気持ちよく演じているのが伝わってくる。
シリーズのテーマである農業が抱える問題を見つめながら、人生の岐路に立った人間の葛藤と決断を繊細に表しつつ、"受け"の芝居で見え方をコントロールしている平岡の演技の奥深さにも注目してみてほしい。
文=原田健
放送情報【スカパー!】
種まく旅人~華蓮のかがやき~
放送日時:2月10日(月)11:30~
放送チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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