ほかに吹越満が調律師として右京と対決する第15話「殺しのピアノ」。倒叙形式で犯人が最初に判明する形式で、右京がピアノ演奏を披露する場面も印象深い。第17話に登場する舞台女優の栗林ななみ(高畑淳子)と右京との丁々発止のやり取りも見どころ。「杉下」という名前を覚えられず、「杉村さん」、「杉浦さん」など何度も呼び間違えるのが面白い。最終話は90分スペシャルの「異形の寺」。尼寺を舞台にホラー調で始まり、次第にトランスジェンダーをめぐる深刻なテーマに発展する大作だ。高橋惠子、高橋由美子の女優陣の演技が素晴らしいが、津川雅彦演じるセミレギュラーの瀬戸内米蔵衆議院議員も登場する。

セミレギュラーと言えば、時折顔を見せてくれる陣川警部補(原田龍二)が初登場するのもseason3第6話「第三の男」だ。正義感こそ強いが、失敗続きで女性に惚れては失恋する痛いキャラ。しかしファンには深く愛され、シリーズに欠かせない男でもある。また、第1話で初登場する若手議員の片山雛子(木村佳乃)も、ひとクセあるキャラで長く相棒ワールドを彩った貴重な人物だ。社会派サスペンスあり、密室劇あり、ホラー調ありと、相棒ワールドの広がりを見せてくれたseason3は、前2シーズンとの違いを際立たせつつ、新たなキャラクターも生み出してくれた。まさに初期シリーズの充実期にあたる見どころ満載のシーズンである。「双頭の悪魔」3部作や「女優」、「異形の寺」はシリーズ生みの親である輿水泰弘が脚本を手掛け、屋台骨をしっかり支えた。現在も活躍しているが、作数は減ってしまっただけに、快作を連発した初期シーズンの輿水の力強い筆運びは秀逸だ。

一方、シーズン1から活躍していた脚本家の砂本量がシーズン4放送中の2005年12月に逝去するという悲しいニュースもあった。ただ、彼が生み出した陣川公平が今も相棒ワールドで活躍していることはファンには嬉しいことである。右京と薫をはじめ、伊丹や芹沢らの現在も活躍中のレギュラー陣は今より若々しく、ドラマ全体の躍動感も感じられる。現在の演技ぶりと比較しながらシーズン3を楽しむのも一興だ。

文＝渡辺敏樹