クールビューティーという言葉がぴったりな凛とした美貌と、確かな演技力で日本を代表する俳優の1人として知られる中谷美紀。そんな中谷が、幼い娘を殺害した若き猟奇殺人犯を追う刑事を熱演したクライムサスペンスが、2023年に放送された「連続ドラマW　ギバーテイカー」だ。

中学校教諭の夫と小学生の娘・穂乃花の3人で幸せな日々を送っていた倉澤樹(中谷美紀)。ある日、小学6年生の少年・ルオトを始めとする貴志一家が彼女の家の隣に引っ越してくる。樹が勤務する小学校に転校してきたルオトは穂乃花と仲良くなり、一緒に夏祭りに出かけるほどに。しかし、その祭りの会場で穂乃花は、ルオトに殺害される。
樹は夫と共に少年犯罪の被害者遺族として長らく絶望と苦悩を味わうが、次第にこの経験を糧に、"自分と同じように苦しむ人を1人でも多く救いたい"という想いを持つようになる。そして、ついに教師から刑事に転身するのだった。

そして、事件から12年後。穂乃花の命日を目前に、樹はルオト(菊池風磨)が医療少年院を退院することを知る。彼が完全に更生したと耳にする一方で、樹の自宅には「あなたの大事なものを、もう一度奪います」と書かれたキャンディの包み紙が届く...。

本作で中谷が演じるのは、愛する一人娘を小学6年生の少年に惨殺された過去を持つ刑事・樹。3人家族で仲睦まじく暮らしている様子が描かれるドラマの冒頭では、黄色やピンクといった明るい色合いのカジュアルなファッションで、娘と仲良く言葉を交わす母親を、優しい笑顔で演じている。

しかし、その12年後には、完全に笑顔を封印し、黒のスーツを身に纏った冷徹な刑事に変貌。神奈川県・都筑中央署刑事課内での上司との会話で見ることができる、無表情かつ感情が一切こもらない話しぶりは、冒頭での"優しいママ"と同一人物とは到底思えないほどだ。中谷はそのギャップを鮮やかに表現し、娘を失った絶望の深さと犯人・ルオトへの怒りが、いかにルオトが樹からさまざまなものを奪ったのかを視聴者に印象づけることに成功している。