
第76回カンヌ国際映画祭で役所広司が最優秀男優賞を獲得した映画「PERFECT DAYS」が4月6日(日)に日本映画専門チャンネルで放送される。渋谷のトイレ清掃員として働く男が過ごす日常を、ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督が、まるでドキュメントのように追う手法。劇中、気を引くような大きな事件や事故は起きない。それでも125分という時間のなか、常に役所が演じた平山という男の行動から目が離せなくなるのだ。
■役所広司でなければ成立しない作品

役所が演じる平山は、日が昇るとともに起き、植物に水をあげ、身支度をしてトイレ清掃の仕事に向かい、帰宅後眠りにつくというルーティンを大切にしている男。しかしルーティンとはいえ、毎日まったく同じ日常はない。ちょっとした変化に心躍らされ、幸せだと感じることもあれば、イラっとすることもある。
そんな機微を丁寧に切り取った本作。エンターテインメントのセオリーでいえば、人々の感情の変化をドラスティックに切り取って提示することこそ、劇的欲求を満たす表現方法だと言えるだろうが、ある意味で真逆のやり方で、人の豊かさを表現しようとしている。
実際、役所演じる平山は、ともにトイレ清掃をするタカシ(柄本時生)や、タカシが熱を上げているアヤ(アオイヤマダ)、さらには行きつけの店のマスターとの会話など、人と接する機会もある。その都度、心が動くようなエピソードはあるものの、平山は感情的な言葉を投げかけるわけでもなく、ちょっとした喜怒哀楽を目線や仕草、微妙な表情で表現している。
物語前半、ほぼ言葉を発することはない平山。しかし、毎日ルーティンをこなす彼を見続けていると、自然と平山が「いま楽しそうだ」「少しイライラしている」などの感情が伝わってくる。そして直接的な表現ではないから、さらに彼を注視したくなる。気がつけば、彼がどんなことを考えているかが分かるようになっているのだ。ちょっとした仕草や態度で変化を表現していることで、直接的に喜怒哀楽を伝えられるよりも、人物に感情移入できるのだ。
■ラストの笑顔をどう解釈するか、役所広司の圧倒的な表現
放送情報【スカパー!】
PERFECT DAYS
放送日時:4月6日(日)21:00~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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