江波が水根にアウトドアスポーツが楽しめる"サンレイの森"が作られることを老舗旅館の女将・池原美也子(市毛良枝)から聞かされた矢先、開発を進める会社、サンレイの計画責任者が何者かに殺害される事件が起きる。そんな中、気になっていたのは少年山岳会の一員として水根に来た浩樹のことだ。聞けば浩樹の父は有名な登山家、三田和浩。槍ヶ岳で悪天候に見舞われ遭難したが、共に登った仲間と発見された場所が違うことから、ひとりで下山しようとしたとマスコミから叩かれたという。大好きだった父の汚名をすすぐ証拠を見つけたいと危険なルートを登ろうとする少年に、時に優しく、時に父親のように本気で怒る江波。登山に同行していたのがサンレイの元副社長、山村だったことも謎を深め、江波は複雑に絡む事件の真相を解明すべく、奔走する。

■寺島と黒木の緊張感あふれる共演も見どころ

久々に共演した寺島と黒木の演技バトルもスペシャルの見せ場だ。突然現れた緒方(黒木)にドライブに誘われた時にはうれしさのあまり、思わずデレデレの笑顔を見せる江波だが、殺人事件の聞き取りにグイグイ入ってくる捜査二課の緒方が追っているのは水根の森林開発に絡む贈収賄事件だった。サンレイの社長の娘、山村由里(国生さゆり)にキツい口調で迫ったことを指摘すると「甘いですね」と刑事時代の失態を持ち出され、加倉井に「あの人には近づかない方がいい」と言われて首をかしげる江波。それでも傷ついた浩樹を立ち直らせようと仲間たちの協力を仰ぎ、なりふり構わず必死になる姿は、庶民のヒーローだ。

結果、その情熱が周囲を動かし、事件も徐々に紐解かれていく。江波に対する態度の奥底にある緒方の心理も明らかになる本作、昭和感たっぷりの"駐在さん"にハマり役の寺島のコミカルかつ男気ある演技に注目だ。

文＝山本弘子