竹内結子の巧みな表現力に魅了されるドラマ「ダンダリン 労働基準監督官」

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西東京労働基準監督署のメンバーには、凛とコンビを組む南三条和也(松坂桃李)、バツイチの土手山郁夫課長(北村一輝)をはじめ、温田祐二(水橋研二)、田中正一(大倉孝二)、小宮瑠璃子(トリンドル玲奈)ほか、非常勤職員の太田昌子(大島蓉子)がいる。非モテ男子の田中が小宮に片思いしているが、小宮は南三条が好きらしいとか、土手山が前妻と暮らす一人息子を溺愛する様子、トラブルを異常に避けたがる真鍋署長といった各人の設定が面白く、凛の強いキャラに加えて各人の個性が際立って楽しい。

ただ、シリアスな設定もあって、相葉社労士事務所の相葉博美代表(賀来千香子)が、ミステリアスで主人公と因縁がありそうな様子で、不気味な存在となる。同事務所の社労士・胡桃沢海(風間俊介)は元監督官で南三条の同期だったが、社労士に転身。彼も陰で段田たちに反感を持っている様子で、敵役的な存在である。また、段田凛に不審なメールを送る正体不明の脅迫者の存在もあり、一話完結形式ながらもそんな伏線も張られているので、最終回まで目が離せない。

緻密な構成で惹きつける脚本は、秦 建日子の筆によるもの。「世にも奇妙な物語」(フジテレビ系)や火曜サスペンス劇場の小京都ミステリー(日本テレビ系)などで活躍し、「ドラゴン桜」(TBS系)ではメインライターも務めた。小説家や作詞家、映画監督や舞台公演などマルチな活動で知られる精力的な脚本家である。

本作でも労働者問題を巡るリアルなテーマを核としながらも、エンタメ要素が満載でサスペンスも絡めるなど、巧みな構成が光っている。

そんな脚本の良さを最大限に生かした俳優陣の力量も素晴らしい。特にコミカルとシリアスのバランスが抜群で、大胆かつ繊細な演技で魅了する竹内結子の力量には驚かされる。松坂桃李も仕事に対する向き合い方に悩み、段田凛に感化されながらも迷いを捨てきれない心の葛藤を巧みに表現。細やかでナイーブな演技は彼の真骨頂だ。北村一輝も存在感が抜群。当時はシリアスな役どころが得意なイメージだったが、コミカルな演技でも新境地を見せてくれた。地味ながら田中と温田の凸凹コンビっぷりや、署長の話し相手を務め、同僚たちを優しく支える太田の存在も妙にクセになる。

「サービス残業」や「名ばかり管理職」、「パワハラ経営者」といった、現実的な労働問題に鋭く切り込み、ブラック企業に立ち向かう労基の監督官は、働く人を守る頼もしいヒーローだ。従来のフィクションではほとんど取り上げられなかった「労働基準監督官」にスポットを当てただけでも価値があるが、非常に見どころが多い「ダンダリン 労働基準監督官」。本作の放送から12年を経た現在。働き方改革が進み、コンプラ意識も高まってはいるものの、悩みを抱える労働者たちは絶えないはず。今見ても考えさせられることの多いドラマであり、当時の竹内の演技を含め改めて多くの人に見てほしい作品である。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

ダンダリン 労働基準監督官
放送日時:4月26日(土)12:15~
放送チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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