小泉今日子とダブル主演を務めるドラマの第3弾「続・続・最後から二番目の恋」が現在放送中の中井貴一。11年ぶりながら、以前と変わらぬ主演2人の関係性や、年月を経たからこその味わいを体現する演技には、好評が寄せられている。

40年以上のキャリアを誇り、多彩な作品に出演してきた中井だが、その中でも画期的な手法での撮影で話題を集めたのが、6月29日(日)にＷＯＷＯＷプライムで放送される三谷幸喜監督作「short cut」(2011年)だ。

奇跡の復活を果たした東京サンシャインボーイズの舞台「蒙古が襲来」が今年上演されるなど、様々なフィールドでヒット作品を放ち続ける三谷幸喜。オリジナル脚本と自ら監督を務める"完全ワンシーン・ワンカットドラマ"シリーズの最新作「おい、太宰」も6月29日(日)の放送・配信を控えるが、「short cut」はその第1弾で"原点"と言える作品だ。

三谷にとってTVドラマ初監督作品という点でもエポックメイキングな「short cut」は、山道に迷い込んだ夫婦が口げんかを通じて互いへの理解を深めていく会話劇。約2時間の長編ドラマとしては前代未聞となる、始まりから終わりまで一度もカメラを止めずに撮影するという手法も話題になり、「日本民間放送連盟賞」ではテレビドラマ番組の最優秀作品となった。

互いに仕事優先の人生突き進み、結婚して10年、関係の冷め切った夫婦は、妻の祖父の葬儀の帰り、山道に迷い込んでしまう。周囲に誰も居ないのをいいことに喪服姿で罵り合う2人だが、胸中を吐き出すうちに徐々に関係に変化が訪れていく...。山道という過酷な環境の中、中井と鈴木京香がNGの許されないワンカット撮影に臨み、歪み合う夫婦として緊迫感がありながらもどこか滑稽さも覚える、抜群の掛け合いを見せている。

中井はエリート男の嫌味ったらしさ、大自然にビビりまくりの神経質な一面など、情けない人物像を表現。三谷とのタッグ作「記憶にございません！」(2019年)でも発揮されていたコミカルな芝居をはじめ、徐々に丸みを帯びていく心境の変化まで、さすがは実力派だ。

一方の鈴木は、夫とは真逆の田舎育ちの豪快な妻を演じ、奔放でチャーミングな存在感を発揮。妻の知り合いとして登場する第三の人物を、三谷作品の常連で「おい、太宰」にも出演している梶原善が演じており、ユーモラスな佇まいを生かした唯一無二の演技で物語にアクセントを加えている。

三谷のクリエイティブに加え、実力派俳優が集ったからこそ実現した挑戦的な企画「short cut」。"完全ワンシーン・ワンカットドラマ"第3弾となる、田中圭、小池栄子、松山ケンイチら豪華キャストによるタイムスリップコメディ「おい、太宰」と共に、併せてチェックしておきたい。

文＝HOMINIS編集部