西田敏行、吉岡秀隆、いしだあゆみら名優が温かい感動を紡ぐ!山田洋次監督作品「学校Ⅱ」
俳優

(C)1996松竹株式会社/日本テレビ放送網株式会社/住友商事株式会社
吉岡が本作で演じるのは、いじめを受けて心に傷を負い、言葉を発することができなくなってしまった生徒・緒方高志だ。物語に最初に登場するのは駅で切符を買うシーンで、その時のたどたどしい口調や、身体をこわばらせている様子から、高志の心の状態がかすかに伝わってくる。
養護学校入学当時の高志はもっとつらい状態にあり、それを体現した吉岡の演技は圧巻だ。母が運転する車の助手席で、虚ろな目でドアに身体を寄せていたり、教室で竜平が優しく話しかけても、身体が固まったような状態で俯いていたりする。
物語が進むと、高志が書いた作文がコンクールで賞を取る。その中に「僕は心の中にカベがあります」という一文があるのだが、まさにそんな空気が高志にはある。竜平と2人で食事をするシーンでは、自分の想いが壁にぶつかり、それがさらに自分を傷つけているような様子がありありと伝わってくる。そんな姿には心が締め付けられるし、難しい役どころを説得力を持って演じきった吉岡の力量はさすがと言うほかない。
■愛らしかったり気が強かったり...魅力と存在感のある教師を演じたいしだあゆみ

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そしてもう1人、本作には注目せずにはいられない女優が出演している。今年3月にこの世を去った、いしだあゆみだ。昨年公開の映画「室井慎次 敗れざる者」「室井慎次 生き続ける者」での熱演も注目されるなど、長きにわたり活躍し続けた女優だ。
本作でいしだが演じたのは、教師の北川玲子。生徒に親身になって接している時の笑顔は、心奪われるほどに明るくてキュートだ。粗相した佑矢を母親のように慰めたり、つらい業務に不満を持つ同僚の小林に強い口調で説教したり、さまざまな感情を投げかける演技も秀逸で、いしだの魅力を存分に味わうことができる。
本作は第20回日本アカデミー賞で優秀作品賞を始め多くの賞を受賞しており、西田は優秀主演男優賞、いしだは優秀主演女優賞、吉岡は優秀助演男優賞をそれぞれ受賞している。それぞれの演技はもちろん、西田や吉岡、そして、いしだがスクリーンの中から届けてくれる感動を、しっかり受け取ってほしい作品だ。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
学校Ⅱ
放送日時:2025年6月4日(水)8:30~、6月10日(火)18:45~ほか
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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