小栗旬が繊細に表現する役の深みにより作品の面白さが倍増!野心家の環境省官僚を演じた「日本沈没―希望のひと―」
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原作:小松左京『日本沈没』
田所教授の不吉な予言が当たり、日本中は大パニックに陥る。そんな未曾有の危機の中、天海は官僚として、東山総理や政界のドン・里城弦副総理(石橋蓮司)、経団連の会長で世界的自動車メーカーの会長・生島誠(風間杜夫)ら海千山千な大物たちを相手どり、国家のために奮闘していくのだが、本作を「官僚という馴染みのない職業の主人公による奮闘劇」だと断ずることなかれ。もちろんそういう側面もあるのだが、さまざまな要素が絡み合い、決断すること自体がはばかられる難しい状況の中で、確信がなくとも決断していかなければならないという"大人ならではのシーン"が肝となっている。1つのことを決めるにしても、関係各所の都合や立場、その時の状況、過去から現在まで続くしがらみ、各人の思惑など、多様な要因で簡単には前に進んでいかない。また、苦しい状況の中、個人的な問題も浮上し、どちらを先にどうしていくのがベストなのか分からなくなってしまうなど、シチュエーションは大きく違うが、社会の中で生きる"大人ならではの複雑さ"をしっかりと描いており、大人たちにこそ"刺さる"内容となっている。
この"大人ならではの複雑さ"を、小栗が繊細かつ明確に表現。目的のためには手段を選ばず、時には強引な手法で政策を推し進める野心家である天海の大胆さや狡猾さはもちろん、難局に直面して打つ手がなくなってしまった時に進むべき道を選ぶシーンなど、千変万化のさまざまな状況が絡み合う中で選択し、決断をしていく"大人らしさ"を表現する演技のリアルさが、観る者の心を打つ。
生きていくというのは、「白か黒」、「是か非」、「右か左」などといった単純なものではない。いつも正解は分からない中で、正解っぽい方を選び取るだけだ。間違いはもちろんのこと、正解だったのか不正解だったのかも分からないこともざらにある。しかし、それでも選択し続けなければならないし、右を選んだことで左を捨てることも承知で進まなければならない。そんなメッセージを、小栗の演技から受け取ることができる。
小栗の演技が表現する、天海が難しい決断をする瞬間の、さまざまな思考が綾なす、言葉では言い表せない "大人ならではの複雑さ"に着目すると、より同作品の面白さを感じていただけることだろう。
文=原田健
放送情報【スカパー!】
日本沈没—希望のひと—
放送日時:2025年6月14日(土)12:00~全話一挙放送
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
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