瀧内公美、河合優実ら「あんぱん」キャストの好演も光る!円熟の長塚京三が世界観を強固にした映画「敵」
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1989年に刊行された筒井康隆の名著「残像に口紅を」が、時を経た令和の時代にTikTokをはじめとする数々のSNSで人気を集めた。世界から一つずつ文字が消えていくとどうなるのかを描く究極の言語実験的小説はこれまでも度々話題となってきたが、再び脚光を浴び、今年1月にはコミカライズ版も発売されている。
「わたしのグランパ」「虚人たち」「文学部唯野教授」と代表作を挙げればきりがない日本SF界、そして文学界の重鎮である筒井康隆には、時代も世代も超えた多くのファンが存在する。近年、そんな彼の作品に再び注目が集まるきっかけとなったのが、8月10日(日)にWOWOWシネマで放送される映画「敵」(2023年)だ。

(C)1998 筒井康隆/新潮社 (C)2023 TEKINOMIKATA
実写映画・ドラマ化されてきた「時をかける少女」をはじめ、アニメーション映画になった「パプリカ」やドラマ・アニメ化された「富豪刑事」など、筒井作品は過去にも数多く映像化されてきた。「敵」で監督・脚本を務めたのは、第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞・最優秀監督賞ほかを受賞した「桐島、部活やめるってよ」(2012年)などで知られる吉田大八。メガホンを取った吉田監督は、長塚京三を主演に迎え、あえて全編モノクロームで撮影。色彩を排除したことで、独特な筒井ワールドへの没入感がより一層強くなっている。
長塚演じる主人公・渡辺儀助はフランス近代演劇史を専門とする元大学教授だ。20年前に妻に先立たれ、都内にある古民家で一人慎ましく暮らしている。自ら料理をして晩酌を楽しみ、食器や文房具一つまでこだわりを持って丹念に扱い、元教え子たちと交流を持つ。講演や執筆で得るわずかな収入と預貯金とであと何年生きられるか計算しながら、来るべき日に向かって穏やかで平和な日常を過ごしていた。だがある日、パソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてきたことで、彼の徹底した丁寧な暮らしが崩れていく...。
長塚はフランス・パリ大学ソルボンヌ在学中に映画「パリの中国人」(1974年)でデビューした経歴を持つ。俳優人生50年を超える日本が誇る名優が、本作で12年ぶりに主演を務めている。立派に歳を重ね、知性と品格を兼ね備えた老年期の人間。丁寧で平和な暮らしを送りながら己の人生を閉じていこうとするが、謎のメッセージを発端に意識が白濁し始め、日々の暮らしが夢なのか現実なのか分からなくなってくる。
放送情報【スカパー!】
敵
放送日時:2025年8月10日(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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