若き西島秀俊の怪演ぶりが新鮮!哀川翔もクールな演技で魅せる 映画「冷血の罠」

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作家・塩田武士氏による珠玉のミステリー小説「存在のすべてを」が実写映画化されることになり、2027年に公開を予定している。監督は瀬々敬久が務め、西島秀俊が主演すると発表されている。瀬々監督と西島がタッグを組むのは、1998年公開の映画「冷血の罠」以来、27年ぶりだという。「踊りつかれて」で第173回直木三十五賞にノミネートされ、「存在のすべてを」も第9回渡辺淳一文学賞を受賞するなど話題の作家・塩田武士の原作ということで楽しみが尽きないが、その前に、2025年9月9日(火)に日本映画専門チャンネルで放送される27年前の「冷血の罠」を、改めて振り返ってみたい。

■「64(ロクヨン)」の瀬々敬久監督が手掛けたサイコ・ミステリー

西島秀俊と哀川翔の掛け合いも見逃せない!
西島秀俊と哀川翔の掛け合いも見逃せない!

瀬々監督といえば、「64 ロクヨン」(2016年)、「糸」(2020年)、「護られなかった者たちへ」(2021年)、「ラーゲリより愛を込めて」(2022年)などで知られ、人間ドラマでの評価が高い。今でこそ大作のイメージもあるが、1990年代はピンク映画界で名を馳せ、佐野和宏、サトウトシキ、佐藤寿保とともに「ピンク四天王」と称されていた。

「冷血の罠」は、まさにそんな時代の作品である。東京の渋谷区桜ヶ丘を舞台に、ひとりの女性の自殺の原因を巡って、因縁ある2人の男が対峙するサイコ・ミステリーだ。芥川賞作家・藤原智美による小説「恋する犯罪」を原作として、階段映画「百年の絶唱」の脚本家・井土紀州と瀬々監督が共同脚色。撮影を「修羅がゆく7 四国烈死篇」の林淳一郎が担当している。主演は映画「蛇の道」と「蜘蛛の瞳」で日本映画プロフェッショナル大賞の主演男優賞を受賞するなど、当時俳優として脂が乗っていた哀川翔が務めた。

渋谷区桜ヶ丘で探偵を営む藤原(哀川翔)の依頼人・須田久子が、何者かによって殺害された。次いで少女がビルの屋上で惨殺されるという事件が発生する。そんなある日、数年前に自殺した妹の元夫・花園(西島秀俊)と再会した藤原は、妹の自殺の原因が花園の浮気だけでなく、何者かに暴行されたことにあったと聞かされて愕然となる。

そして、未だに捕まっていない犯人を個人的に追っているという花園から調査の続きを依頼された。桜ヶ丘で起こったあらゆる事件を調べることで犯人に近づこうと考えた花園から、5年がかりで作成した綿密なメモと事件発生現場を記した詳細な犯罪地図を渡された藤原は、地図に記された事件現場を検証して歩く。しかし、犯人の手がかりは一向に掴めなかった。そんな矢先、調査の依頼後に失踪していた花園から1本のビデオが届く...。

本作の主人公は、哀川翔が演じる探偵・藤原で、西島が準主役とも言える花園を演じている。ただ、花園は犯人を捜して夜の町を徘徊するうちに、いつしか人を襲って逃げる快感に酔いしれる犯人の気持ちに同化するようになっていく。

いわゆるミイラ取りがミイラとなるパターンだが、若き西島の怪演ぶりが極めて印象的な作品に仕上がっている。事件の真相は?真犯人は誰か?藤原も疑いを抱いているが、花園は果たして真実を語っているのか?様々な謎に迫りながらも、どこか花園に踊らされているようにも見える藤原が少しずつ真相に近づいていくストーリーの妙と、説明的なセリフを極力排除した思わせぶりな展開に魅せられていく映画だ。哀川翔はやや抑えた演技だが、終始クールな芝居で実に画になっている。

■哀川翔が探偵役で主演し、ブレイク前の黒沢あすか、田中要次も共演

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放送情報【スカパー!】

冷血の罠
放送日時:2025年9月9日(火)23:10~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
出演:哀川翔、西島秀俊、黒沢あすか、下元史朗、田中要次、朝岡実嶺
※放送スケジュールは変更になる場合があります。

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