本作でデビューを飾った藤野涼子は、役名をそのまま芸名にした。警察官の父を持つクラス委員の藤野は、遺体の第一発見者で、不良少年グループによるいじめを無視していたことを悔やみ、真相究明に挑むことになる。

中学生らしいあどけなさもありながら、混沌としていく事態を冷静に見つめる。涼やかで純粋な眼差し、凛とした佇まいが美しい。彼女の葛藤、湧き上がる疑念や怒り、悲しみを等身大に表現し、新人とは思えない演技を見せた。

藤野や板垣のほか鮮烈な印象を残したのは、当時E-girlsのメンバーだった石井杏奈。ニキビに悩む少女・三宅樹理を熱演しているが、不良少年グループから受ける壮絶ないじめはあまりにもリアルで痛々しい。思春期らしい言動や彼女の屈折した感情、苦しみを生々しく体現する様は、若手らしからぬ怪演と言える。

いじめや家庭内暴力などの社会問題を背景に盛り込みながら、少年少女が"学校内裁判"を通じて事態の真相に迫っていく本作。「八日目の蝉」(2011年)など多彩な作品を手掛けてきた成島出監督が、板垣や藤野ら若きキャストたちの瑞々しい演技を丁寧に映し出すこのミステリー巨編から、最後まで目が離せなかった。

文＝中川菜都美