 
 原作 垣根涼介『室町無頼』(新潮文庫刊)(C)2025「室町無頼」製作委員会
物語が始まるのは室町時代の1461年。幕府の圧政に飢饉と疫病が加わり、この時8万2000もの人々が命を落とした。生き残った者も衰弱しきっているというのに、亡骸の処分のため役人に酷使されているありさまだ。うず高く積まれた遺体を処分している鴨川沿いにふらりと現れたのが、兵衛だった。兵衛は働く民を怒鳴りつける役人に後ろから近付き、あっという間に川に蹴落としてしまう。また、道端で身を寄せ合っているみすぼらしい母娘には、食べ物や布を分け与えたりもする。
そんなシーンの兵衛にはやるせない雰囲気が漂っていて、人々が苦しむ世への憂いが伝わってくる。そして、そこから兵衛の活躍が始まり、その生き様が克明にスクリーンに映し出されていく。
旧知の仲である洛中警護役・骨皮道賢(堤真一)の元に囚われていて、その後行動をともにすることになる少年・才蔵(長尾謙杜)をひと目見た時の、何かを感じ取ったような深い眼差し。民から金を巻き上げるために作られた関所を突破する時の、堂々とした胆力に満ちた歩き方。縁のある村が野武士に襲われている時に、「1人も逃すな」と言って、すぐさま救援に向かう決断力と気迫。人を思いやる優しさと、迷いなく戦いに飛び込む豪胆さ。大泉が演じる兵衛には、人としての"芯の強さ"が十二分に表れている。同時にその姿からは、兵衛自身がそれまでに蓄積してきた経験や人脈、達人と呼ばれるほどの剣の腕に裏打ちされた、揺るぎない自信が滲み出ている。
その強さと自信があるからこそ、兵衛は本作のタイトルにもある"無頼"、誰に頼らずとも時代を生き抜くアウトロー的な生き方ができるのだ。それを演技や空気で伝える大泉の力量はさすがで、どんな苦境も飄々と切り抜けてしまう兵衛はまさに"かっこいい男"と言える。
■初挑戦の本格的な殺陣と遊女と過ごすシーンにも大泉の魅力がたっぷり
 
 原作 垣根涼介『室町無頼』(新潮文庫刊)(C)2025「室町無頼」製作委員会
大泉演じる兵衛が"かっこいい男"であるポイントは、他にもたくさんある。大泉が本作で本格的に初挑戦したという殺陣もそのひとつ。関所の役人を切り倒すシーンでは、目の覚めるような鋭い立ち回りを見せてくれるし、一揆のさなか、二刀流で骨皮を相手にするシーンなどは圧巻だ。
また、懇意な高級遊女・芳王子(松本若菜)の膝枕で互いの10年後を語る時、遠い目で「無頼の身に10年は長すぎる」と呟く場面は、アウトローとして生きることの儚さが漂う胸に染みるシーンとなっている。
強さ、鋭さ、そして人間味に溢れる蓮田兵衛の生き様を通じて伝わってくる大泉の魅力を、本作でぜひ、たっぷりと味わっていただきたい。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
室町無頼
放送日時:2025年11月8日(土)20:00~、11月16日(日)10:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
放送日時:2025年11月9日(日)12:15~、11月14日(金)17:40~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
詳しくは
こちら
 
             
             
            









 
               
               
              