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その点で本作は、タイトルに「GRADUATIONS」と冠されている通り、「卒業」をテーマとして、登場人物たちの心情や成長にフォーカスしている。卒業式で泣いてしまうのは、同級生たちと離れるのが悲しいとか、学校生活が終わってしまうのが寂しいという感情があるからだろう。本作においても、スパナに「仲間と離れたくない」「この瞬間を終わらせたくない」という心情があることが示唆され、それがタイムループという形で表れたという捉え方もできるような気がする。主人公は宝太郎ではあるが、基本的に黒鋼スパナの視点でストーリーが展開していくこともポイントだ。スパナが実質的な主役となっている点でも、"攻めた"作品と言える。
ちなみに、短編の「ホッパー1のはるやすみ」は、テレビシリーズ後の世界。主人公の宝太郎が錬成して生まれた「新しい地球」を舞台に、ケミーたちの楽しい日常を描いている。主役格のケミー "ホッパー1" が、宝太郎と久しぶりに遊びたくなり、他のケミーたちも賛同する。ところが、地球につながる「扉」が開かなくなってしまい、ケミーたちは知恵を出し合ってその原因を探るという、ほのぼのした内容だ。
■本島をはじめ、若いキャストたち自身の"成長"も感じ取れる
本作は、「卒業」「旅立ち」「変化」というテーマに正面から向き合った点に好感が持てるし、視聴者にもその点が評価された。黒鋼スパナを中心にキャラクターの変化と成長をしっかり描いたドラマ性にも見ごたえがあった。テレビシリーズの世界観を壊すことなく、本編の正統的な続編として描いた点もファンには好意的に迎えられたようだ。
そして、黒鋼スパナ/仮面ライダーヴァルバラドの新たな強化フォームは、ダイオーニGTとギガントライナーGTのライドケミーカードで変身する仮面ライダーヴァルバラドGT。両腕の機関車の造形が特徴的で、特撮ファンには一見の価値ありだ。
また、錬金術の世界で「破壊と再生」など相反するものの統一の象徴とされていた"ウロボロス"の名を持つ最強の敵ウロボロスが登場するのも見逃せない。声を担当するのは、声優の杉田智和。「銀魂」の坂田銀時役や「涼宮ハルヒの憂鬱」のキョン役などでアニメファンにはおなじみだが、特撮作品でも数多く活躍している。仮面ライダーシリーズでは、「仮面ライダージオウ」の仮面ライダーギンガ、「仮面ライダーキバ」のキバットバットIII世の声も担当。「仮面ライダーガッチャード」でもケミーの一種であるテンフォートレス役で声の出演をしている。
本島をはじめ、当時15歳だった松本など若いキャストが多かった本作は、俳優たちも作品を通じて「成長」していった様子が伝わってきた。1年間にわったテレビシリーズを経て、実質的な最終回だった本作は、キャストたち自身にとっても「旅立ち」となった作品のはずである。長期にわたって参加してきた作品であるほど、撮影が終わってしまう寂寥感が沸き上がるだろう。若い彼らであれば猶更だ。おそらく、そんな思いを込めながら彼らが撮影に臨んだであろうことも想像できる。「仮面ライダーガッチャード」の実質的なファイナルとして、そんな感慨深い作品でもあり、視聴者は我が子の卒業式を見守るような感覚を味わえるかもしれない。本編を観た人には、いっそう心に響く派生作品としておすすめしたいが、逆にテレビシリーズを観たのに、本作を観ないのはあまりにも勿体ない一本と言えるだろう。
文=渡辺敏樹
放送情報
仮面ライダーガッチャード GRADUATIONS/ホッパー1のはるやすみ
放送日時:2025年12月7日(日)11:00~
放送チャンネル:東映チャンネル(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合があります
詳しくは
こちら









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