木下は白球を追いかける高校球児だった、芸能界とは無縁の青年。しかし、184cmと恵まれた体格に、部活動で鍛えた身体能力と精神力の高さを持ち合わせ、初めての世界にも真っ直ぐに飛び込んでいく。イクトはキレると手がつけられないが曲がったことが嫌いな一本気な一面も持つ。これが初めてのオーディションだった木下だが、若さゆえの怖いもの知らずなところも役柄と重なる。

情熱と怒りを内に秘め、自分を目の敵にする教官にも格上の相手にも真正面からぶつかっていく。演技未経験とは思えない堂々とした雰囲気を纏い、荒削りな原石感が眩しい。

一方の吉澤は、ダンスボーカルユニット"原因は自分にある。"のリーダーとしても活動中で、ドラマや舞台への出演経験もあるが映画は今作が初出演。シャープな顔立ちに強い意思を感じさせる瞳が印象的だ。イクトと共に格闘家を目指しながら、彼の事件に関わる秘密を抱えるリョーマ。その真っ直ぐさを時に眩しく感じても、殴られて倒れても、また立ち上がる。

怒りや恐怖、複雑な心情も細やかに表現する。自分の弱さを克服したいともがく、表情豊かで人間臭いところも魅力的に映る。同じ夢に向かって絆を深めていく2人に、傷だらけになりながら心を折らずに戦い続ける姿に、胸が熱くなる。

そして、彼らの前に立ちはだかる本作のラスボス的な存在・御堂を演じるのはGACKT。最凶の半グレチームを率いる最強の男の狂気を違和感なく体現する。圧倒的な存在感、最凶にして最強の恐ろしいオーラが、画面越しにも伝わってくる。それでいてイクトたちの青さに思わず反応してしまう、人間らしいコミカルさも彼らしい。

ブレイキングダウンを題材にした熱い不良バトルアクションとなった本作。キャストたちが情熱を注いだアクションシーンも見応え十分だ。細かな仕掛けも楽しみながら、木下と吉澤のフレッシュな煌めきと豪華キャストとの化学反応、熱い展開に胸をたぎらせてほしい。

文＝中川菜都美