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監督の西河克己は、吉永小百合の主演作を多く撮ったことで知られ、「若い人」、「青い山脈」、「伊豆の踊子」、「帰郷」などの名作を残し、和泉雅子主演の「エデンの海」でも評判を呼んだ。鳥取県の出身で、故郷への思い入れが深かった西河監督。本作の舞台は原作では島根県の松江だったが、映画では故郷の鳥取砂丘や賀露港、智頭町を舞台として脚色した。
山や海、砂丘を抒情的に描写し、映像詩のような美しい画面に仕上げている。特に山深さを強調する映像は、山村の閉鎖性を印象付け、自然と人間の厳しさの暗喩としても表現されている。身分違いの恋に走った2人の影で、小雪の両親が村八分にされてしまう場面なども現実的で物悲しい。
小雪の父・正造を花沢徳衛、母のサトを初井言栄が演じているが、この2人の演技も絶品だ。「七人の侍」や「生きる」など、黒澤明作品で知られる名優・志村喬も厳格な父親・惣兵衛役でお手本のような演技で貫禄十分。古い価値観に縛られ、順吉を名家の娘と結婚させようとするが失敗する。
この名家の娘・美保子役を演じているのが太田雅子、後の梶芽衣子である。東映に移って「女囚さそり」シリーズなどで人気を博した。クエンティン・タランティーノが梶の大ファンを公言していることでも有名だ。本作では出番こそ少ないが、個性を感じさせて後に人気女優の道を駆け上がる萌芽を感じさせる。
戦争によって引き裂かれる悲恋物語は珍しくないが、本作は男が戦死するのではなく、ヒロインが病気を患うという展開だ。"木挽唄"をモチーフにするところも見事で、離れ離れになった2人が、同じ時間に木挽唄を歌おうと約束する。舟木ののびやかな歌声が耳に染み入るようで、じつに印象深い。
近年で再評価されている映画「絶唱」が、チャンネルNECOでオンエアされる。本作は舟木一夫が青春歌謡映画スターから脱皮し、単なるアイドルではなく、俳優としての評価を決定的にした一本だ。繊細で純粋な青年の内面を丁寧に表現し、悲恋を素直に演じ切った点が評価された。
和泉雅子の美しさと気品も見事で、さすがに日本映画の黄金期を築いた女優の一人に数えられるだけある。ちなみに1975年に西河監督自身が本作をリメイクしている。山口百恵と三浦友和という黄金コンビが主演し、やはりヒットした。同一監督によるリメイクという点で、両作を比較して観賞するのも一興だ。
文=渡辺敏樹
放送情報
絶唱
放送日時:2025年12月8日(月)8:00~
放送チャンネル:映画・チャンネルNECO(スカパー!)
出演:舟木一夫、和泉雅子、太田雅子、志村喬、花沢徳衛、山本勝、山田禅二
※放送スケジュールは変更になる場合があります。
詳しくは
こちら

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