渡辺謙の静かな迫力...確かな演技力で"刑事の重さ"を体現!北村一輝が出す、独特な不気味さも注目「横山秀夫サスペンス「沈黙のアリバイ」
俳優
小説家の横山秀夫は、上毛新聞の記者を経て作家に転身。「半落ち」や「64(ロクヨン)」、「クライマーズ・ハイ」といった代表作の多くが映像化され、ヒット作も数多い。特に警察小説を得意とし、中でも「第三の時効」(集英社)は、6作の短編が収録された傑作としてファンにも評価が高い。
その6作をすべてドラマ化したのが、2002年から2005年に放送されたTBS系「横山秀夫サスペンス」だ。今回は、その第1作「沈黙のアリバイ」(2002年)をご紹介したい。
■「笑わない男」という強烈な主人公を演じる渡辺謙の静かな迫力
原作小説は「F県警シリーズ」とされるが、本作では山梨県警本部の強行犯捜査係を舞台に設定し、主人公の朽木泰正警部を渡辺謙が演じている。山梨県警捜査一課の警部・朽木(渡辺謙)は笑わない男だ。9年前に事件現場へ車で急いでいた時に、少女をはねて死なせてしまい、母親からの「あなたは二度と笑わないでください。この子は二度と笑えないのだから!」との言葉に衝撃を受け、朽木は笑うことを完全に忘れた。
以降の朽木は、その母親の言葉を振り払うように仕事に打ち込んできた。ある日、担当する現金強奪殺人事件が第一回公判を迎える。パチンコ店の売り上げを積んだ現金輸送車を二人の男が襲い、警備員二人を射殺。巻き込まれた小さな女の子が死んだ悲しい事件だ。主犯は逃亡し、共犯者の湯本(北村一輝)が逮捕された。物証がなく取り調べは難航したが、朽木の部下の島津(大浦龍宇一)が湯本を自白させたのだった。
だが公判の日、湯本は「すべては警察のでっち上げで、自分にはアリバイがある」と自白を翻す。法廷は騒然となり、閉廷が宣告された。だが朽木は、湯本が嘘をついていると直感し、事件の真相に迫っていく...。
過去の事故をトラウマとして抱えて苦悩する朽木の心理は、表情、沈黙、間の取り方といった渡辺の演技の技術により、視聴者にしっかり伝わる。声を荒げることもなく、説明セリフがほとんどないのに、朽木の苦悩を想像できるのだ。視聴者にはわずかな目線の揺れや呼吸の変化から、朽木の「迷い」が伝わる。この男が「重いもの」を背負っていることを見る者に理解させ、納得させてしまう。そんな芝居ができる俳優は決して多くない。派手な演技を封印し、感情を抑制しながらも沈黙と視線、間の取り方だけで主人公の朽木を完成させたと言ってもいい。
取り調べの場面では、机を叩いて相手を威圧するようなことは一切しないし、大声で怒鳴ることもない。それでも、場の空気を支配する力がある。むしろ、低く抑えた声のトーンや相手を凝視する目線の強さ。さらに長い「沈黙」によって、相手を圧する。これほど「黙っている」ことの怖さを感じさせる刑事は、ドラマ史上でも珍しいのではないか。渡辺謙が、横山秀夫作品で最も重要な「"刑事の重さ"を、説得力をもって体現した俳優の一人」と評価されるのも当然かもしれない。






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