原作:小松左京『日本沈没』
本作を語る上で欠かせないのが、小栗旬と松山ケンイチという、日本映画界を牽引する二人の競演である。小栗演じる天海は、相手が誰であっても鋭く指摘し、いつの間にか相手の懐に入り込む「動」のリーダーだ。
一方、松山演じる常盤(経済産業省)は、大企業の次男坊らしいおおらかさと、周囲を調整する柔軟さを備えた「静」のリーダーといえる。大学時代からの強い絆で結ばれた二人は、時にそれぞれの立場で激しくぶつかり合う。しかし、その根底にあるのは"どうすればこの国を守れるのか"という共通の願いだ。彼らが模索する姿は、現代における"真のリーダー像"を問いかけてくる。
小栗旬は、過去作で見せた"ストイックな天才"の系譜を継ぎつつ、今作ではより"泥臭い現実主義者"としての重みを加えた。相手を射抜くような鋭い眼差しと、目的のために冷徹になろうとする葛藤。その佇まいは、まさに国を背負う男の迫力に満ちている。
対する松山ケンイチは、かつての憑依型の演技とは対照的に、今作では"極めて真っ当で、調整能力に長けた人格者"という役どころを見事に演じきった。小栗が放つ強い「熱」を、松山が柔らかく受け止め、組織の中で形にしていく。この2人のバランスこそが、ドラマを単なる理想論に終わらせない説得力を生んでいる。
この2人の共演は、互いの個性を打ち消し合うのではなく、高め合う。小栗が「突き進む力」を示すならば、松山は「支える力」を示す。この「静」と「動」の共鳴は、他の作品では見られない今作ならではの魅力だ。
「日本が沈む」という絶望的な状況下で、彼らが見つけた「希望」とは何であったのか。豪華キャストが命を吹き込んだ、魂の震える9時間半をぜひ目撃してほしい。
文=石塚ともか









