寺尾聰×深津絵里で紡ぐ、温かな物語――吉岡秀隆も好演した映画「博士の愛した数式」
俳優
寺尾聰と深津絵里の共演で、記憶がたった80分しかもたない天才数学博士と、10歳の息子を持つ家政婦の交流を感動的なタッチで綴った2006年の映画「博士の愛した数式」。原作は第1回本屋大賞に輝いた作家・小川洋子による同名小説で、小泉堯史が監督を務めた。
10年前に不慮の事故に遭ったことが原因で、記憶が80分しかもたない後遺症を抱える天才数学博士(寺尾)。彼は毎日、新しい出来事を忘れてしまうため、スーツのポケットや壁に無数のメモを貼って生活したり、数字を通したユニークな会話で人とコミュニケーションをとったりしながら生活していた。そんな彼のもとに、10歳の息子を育てているシングルマザー・杏子(深津)が家政婦としてやって来る。記憶がもたない博士に最初は戸惑う杏子だったが、やがて息子(齋藤隆成)も交えて博士と過ごすようになり、博士の人柄に次第に惹かれていくようになる。
■博士の魅力的な人柄を好演した寺尾聰
(c)2006 「博士の愛した数式」製作委員会
寺尾が演じた数学者の博士は、杏子と顔を合わせるやいなや靴のサイズや電話番号を尋ね、「実に潔い数字だ。4の階乗だ」「素晴らしいじゃないか」とユニークなやり取りを繰り広げ、嬉しそうに笑みを浮かべる。そうかと思えば、数学のことを考えている時に杏子から話しかけられると露骨に不機嫌そうな顔をして怒り出す。数学について考えることを"数字と愛を交わす"と表現するなど、どこまでも数学が好きな人物。そんな博士を寺尾は、どこか少年らしさも感じられるような澄んだ瞳で演じている。
杏子が料理している姿を興味津々で眺めたり、彼女の息子が1人で留守番をしていると知った時には「子供を1人ぼっちにしておくなんて」と困惑したり。そして、杏子が家政婦の仕事の時には息子も博士の家に連れてくるように言い、息子に"ルート"と呼び名をつけて、数学を教えたり、野球をしたりと交流を深めていく。何事にもまっすぐ過ぎるがゆえにきつい物言いをすることもあるのだが、ルートに向けるまなざしは優しさで溢れており、杏子が博士の人柄に惹かれていくのも納得だ。そんな博士を、寺尾が穏やかな空気を携えた自然の佇まいで、魅力的に演じている。









