©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会
2012年に始まったドラマ『孤独のグルメ』は、ひとりで食べる時間を、これ以上ないほど豊かなドラマに変えてきた。輸入雑貨商の井之頭五郎が、営業の合間にふらりと店へ入り、腹の声に従って食べる。大仰な事件も、大きな恋もいらない。けれど彼が箸を伸ばすまでの逡巡や、一口目で目がわずかに開く瞬間に、なぜか胸を掴まれる。そんな静かな快楽を支えてきた松重豊が、監督と脚本、主演まで担って映画に踏み出したのが『劇映画 孤独のグルメ』だ。舞台は東京から、フランス、韓国、長崎へ。スケールは広がっていくのに、中心にあるのは相変わらず、腹が減ったという、たった1つの衝動である。

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物語の出発点は、五郎がかつての恋人の娘である松尾千秋に呼ばれてパリへ向かう場面だ。そこで千秋の祖父から、子どもの頃に飲んだいっちゃん汁をもう一度という依頼を受ける。五郎は仕事人らしく淡々と引き受けるが、この淡々さが映画では一層効いてくる。異国の地、見慣れない空気、言葉の壁。状況が派手になるほど、松重は五郎を騒がせない。大きなリアクションに頼らず、目線と沈黙で、いま何が起きているのかを伝える。観客は、五郎が黙っているのに妙にうるさい理由を、改めて思い知ることになる。
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