
©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会
松重の演技でいちばん説得力があるのは、やはり食べる場面だ。五郎の食べ方は上品でも器用でもない。けれど迷いがない。注文を決めるまでは散々悩むのに、いったん決めたら身体がすっと前に出て、食べることに集中していく。一口目を入れた瞬間、目つきがわずかに変わり、肩の力が抜ける。次の一口へ向かう箸が止まらなくなるのも、芝居として盛っているというより、味に反応して体が勝手に動いているように見えるから面白い。松重は「うまい」と声で押し切らず、黙ったまま、表情と手の動きで伝える。観客はその正直さに笑いながら、同時に少し羨ましくなるのだ。

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監督としての松重が巧みなのは、このシリーズの核であるひとりでいることを最後まで崩さないことだ。登場人物が増え、舞台が海外に広がっても、五郎は誰かの輪の中心に入っていかない。必要なときにだけ関わり、用が済めばまた1人に戻る。その往復が丁寧に描かれるから、旅がにぎやかになっても、五郎のペースは乱れない。その加減ができるのは、松重が五郎という役を、いまも余計な飾りを足さずに成立させられる俳優だからだ。
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文=川崎龍也











