【タカラヅカ】凪七瑠海が花組公演『蘭陵王』で実在した美しすぎる武将に!

昨年末の花組公演『蘭陵王-美しすぎる武将-』が早くも6月16日(日)にTAKARAZUKA SKY STAGEで放送される。蘭陵王とは、6世紀中国・北斉の皇族・高長恭のこと。武勇にも優れたが、あまりの美貌ゆえに兵士たちの士気が下がるため、あえて仮面をつけて出陣したという伝説が有名だ。この伝説を基にした雅楽や京劇、中国・台湾のTVドラマ、最近ではゲームのキャラクターでも知られている。木村信司脚本・演出のタカラヅカ版は、そこに「生きていくこと自体に意味は必ずある」というメッセージが込められ、心打たれる作品となった。

■凪七瑠海が美しさ、高潔さ、勇猛さを併せ持つ蘭陵王を演じる

主人公の蘭陵王を演じたのは、専科の凪七瑠海(なぎなるうみ)だ。凪七は2003年に89期生として入団。花組トップスターの明日海りお、雪組トップスターの望海風斗をはじめ、スターを多く輩出した期として知られるが、凪七もその1人である。凪七は宙組・月組を経て2016年専科に移動した。専科とは花組、月組、雪組、星組、宙組の5組とは別の遊軍的な組織で、所属メンバーはさまざまな組の公演に出演する。今回の公演は花組公演に専科の凪七が出演して主演を務める珍しいパターンだ。

近年は幅広い役どころに挑戦する一方で、月組公演『エリザベート』(2009年)のエリザベート役、専科公演『オイディプス王』(2015年)のイオカステ役など、凛とした強い女性の役にも定評がある。それだけに、美貌と武勇を兼ね備えた蘭陵王も適役だ。親に捨てられ、美しさゆえに男たちに愛され言いなりになるしかない少年時代、皇族であることが分かり、権謀術数が渦巻く王宮の中でたくましく生き抜いていく青年時代、そして驚きの結末まで、波乱の人生の中でさまざまな顔を見せる。

■瀬戸かずや、音くり寿らが見せる豊かな表現力にも注目

瀬戸かずや演じる皇帝・高緯役が新境地だ。生粋の花組男役である瀬戸は、これまでは男の色気を感じさせる骨太な役どころが多かったが、高偉は「美しいものだけを愛する」男性。一見、奔放に振る舞う彼も、最後に権力者としてのプライドを捨てることはできない。歴史上、暗君として汚名を残してしまう人物は、本当は彼のように役割に縛られて心の赴くままに生きられなかった人なのではないかと考えさせられる。

本作のヒロインは、音くり寿が演じる洛妃だ。その正体は敵国の間者であり、そのようにしか生きることができなかった暗い過去を背負う。蘭陵王に生かされ愛を知ってから、かたくなな心が溶かされ、次第に変わっていくさまを的確に表現している。少数精鋭の花組選抜メンバーによる公演だけに、若手の頑張りも頼もしい。高緯のパートナー・逍遥君の帆純まひろは、嫉妬の炎に燃える姿も端正な美しさ。さらに、航琉ひびきが村の長者、皇帝など大車輪の働きぶりを見せる。

■ドラマチックなストーリーに東儀秀樹の音楽が華を添える

蘭陵王と洛妃が最後に選び取る道は、与えられた役割、期待、あるいは欲望...それらを全て振り切り削ぎ落としたところでなお残る、「己自身」に立ち戻って生きていくことの清々しさを教えてくれる。東儀秀樹が演奏を担当した音楽も美しい。特に最初に蘭陵王が、後の場面で洛妃がそれぞれ歌う楽曲の歌詞が深く、印象深い。東儀が作曲したフィナーレナンバーは「雅楽オタクが聴くと『蘭陵王だな』と分かる」アレンジになっているという。物語はもちろん音楽にもじっくり耳を傾けながら楽しんでほしい。

文=中本千晶

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放送情報

『蘭陵王-美しすぎる武将-』('18年花組・KAAT神奈川芸術劇場・千秋楽)
放送日時:2019年6月16日(日)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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