3月22日(金)から東京・下北沢の本多劇場で上演された舞台『M&Oplaysプロデュース「クラッシャー女中」』が、7月6日(土)に衛星劇場でTV初放送される。
同作は、作・演出の根本宗子と制作会社のM&Oplaysがタッグを組んだ本多劇場での公演第2弾。麻生久美子と中村倫也のW主演で、貪欲でやっかいな女・ゆみこ(麻生)を中心に繰り広げられる悲喜を描く。
ゆみこはあるたくらみを持って、義則(中村)の暮らす屋敷に女中として潜り込む。だが、"育ちのいいお坊ちゃん"という仮面の下に底知れぬ本性を隠し持っていた義則によって、ゆみこの計画はねじれ、思わぬ方向へ暴走し始める、というストーリー。
今回、"欲望まみれの絶対王子"義則を演じた中村にインタビューを行い、舞台の感想や根本作品の印象、共演者たちとのエピソードについて語ってもらった。
――3月22日の本多劇場での東京公演から始まり、名古屋、大阪、島根、広島と5都市を巡る公演でしたが、振り返ってみて現在の心境は?
「激闘でしたね。稽古も(日数が少ない)2月だったので、常に『あと何日で本番だ』って思いながらやっていましたし、公演が始まってからも全部で37ステージあったのですが、あっという間に過ぎていった感じでした」
――熱量の高い作品だったと思いますが?
「舞台に出てから(公演中に)一度楽屋に戻れるまで、出てはハケて着替えて、出てはハケて着替えての繰り返しで、すぐに1時間半くらいが過ぎていました。役柄的にも接する相手によって態度を変えるキャラクターだったというのもあり、1回1回の公演もあっという間でした。体力、精神力共に必要な作品でしたが、始まってしまえばジェットコースターみたいに転がっていくような芝居だったので、それに乗っかって...という感じでした」
――初出演となった根本作品の印象は?
「根本作品の中でも割とチャレンジングなことをやっていたと思うんです。女性の作家だからなのか、根本さんだからなのか分からないんですけど、自分が客として観ていた時は気付かなかったのですが1文が長い!翻訳ものを読んでいるような気持ちになったりして、根本さんの個性なんだろうな。あとは、核心を突いていないようで突いているせりふがあったりして、"バス停でバスを待っていたら知らない間にバスが通過しちゃってた"みたいな。だから、本番に入ってから『このせりふでこうなるのか』って気付くこともありました。そういう"気付き"がいつもあったからこそ、芝居の練度を上げていく上で最後まで楽しくできたんだろうなって思いますね」
――演じる上で心掛けたことは?
「根本さんが僕に期待して課したところでもあるのですが、義則は(接する相手によって)ガラッと変わるキャラクターで『前半は人としての軸が見えないでほしい』というオーダーがあったので、そういうところも含めて声の使い分けだったり、姿勢とかベクトルとか熱量とか、いろんなことを考えながらやっていました」
――演じていて苦労したところは?
「ラストの麻生さんと2人で掛け合うところは、『こんなにも逃げ場のない環境に役者を追い込みますか...?』って思いながら台本を読んでいたくらいで...(苦笑)。どっちがミスっても互いに拾えない瞬間もあったりして。細いクモの糸の上を命綱なしで2人で渡らなければいけないようなシビれるシーンで、どう転ぶか自分でも分からない、役者が安心しないようにやらなきゃいけないシーンだったので、毎回大変で怖いけどその分楽しいという感じでした。僕は『最終的には共倒れになればいいや』という思いでやってたんですけど、麻生さんは心配性で"気にしい"なところがあって、僕と麻生さんの性格がポジティブとネガティブで真逆だったから、今思えば面白い組み合わせだったなって思いますね」
――共演者の皆さんとのエピソードは?
「みんな変な人たちでしたもんねぇ(笑)。(物語の語り部の女中役の)佐藤真弓さんは地方に行った時にみんなで神社に行くと、良い"気"を集めようと両手を広げるんです。『こうすると(良い"気"が)入ってくる気がするじゃない!』って。一方、(義則の親友・華鹿男役の)"たむけん(田村健太郎)"はずっとホテルで1人で本を読んでいて、『そんなの東京でもできるじゃないか!』って思ったり。(義則が一目惚れする静香役の)趣里はカメラが入った公演では、いつもよりも丁寧にメイクしていて『かわいいなこいつ』って(笑)」
――芝居や意識など映像作品と舞台での違いは?
「もちろんそれぞれ良さがあって特徴があって、映像では映像の舞台では舞台の緊張の仕方があり、それぞれの怖さと楽しさがある。でもそれだけで、僕の中ではそんなに違いはないですね。異種格闘技っていう感じですかね」
――義則は何の才能もないということにコンプレックスを持っているキャラクターでしたが、ご自身が思う"自分の才能"は?
「動物に好かれることですね。昨日も公園で本を読んでいたら"黄色いバナナムシ"って呼ばれている『ツマグロヨコバイ』が寄ってきたので、一緒に遊んでました(笑)」
――義則は "小さくて目が離れている"という好きな女性のタイプが確立していましたが、ご自身の好きな女性のタイプはありますか?
「それは全くないんですよ。だから、役を作る上で最初にそれについて考えました。『こいつはなんでこんなに好きなタイプが決まっているんだろう?』って。義則にとっては(好きなタイプが決まっていることの)理由がないのかもしれないけど、自分には(決まった好きなタイプが)ないからその理由を決めなきゃいけなくて、自分の中での設定として『親から虐待を受けて、唯一逃げられる相手が人形だったんじゃないか。だから、人形っぽい見た目の女性がタイプなんだ』と決めて演じていました」
――最後に視聴者の方にメッセージをお願いします!
「(公演時には)毎日当日券に並んでくださって、それでも観られない方が多かったと聞いているので、そういう人にも観てもらいたいなって思います。また、(田村演じる)華鹿男という役に注目して観てもらえればなと。田村を売っていこうと思ってるので(笑)」
文=原田健 撮影=中川容邦
ヘアメイク=松田 陵(Y's C) スタイリスト=戸倉祥仁(holy.)
衣装=ストライプジャケット・ストライプシャツ:共にDIET BUTCHER SLIM SKIN、その他スタイリスト私物
放送情報
M&Oplaysプロデュース「クラッシャー女中」
放送日時:2019年7月6日(土)23:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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