専科・轟悠のリアルな演技にも注目!宝塚月組公演『チェ・ゲバラ』

『チェ・ゲバラ』('19年月組・ドラマシティ)より
『チェ・ゲバラ』('19年月組・ドラマシティ)より

「えっ!宝塚でゲバラの話をやるの?見てみたい」、いつもは宝塚に興味のない人からもそんな風に声をかけられた公演がいよいよ5月17日(日)タカラヅカ・スカイ・ステージで放送される。月組公演『チェ・ゲバラ』である。

1幕は盟友カストロとの出会いからキューバ革命を成功に導くまでが描かれる。続く2幕では米ソ冷戦下で揺れるカストロ政権のもと、ゲバラは新たな道を歩き始める。
 
ミュージカル好きな人の間で「チェ・ゲバラ」と聞けば、思い出すのは「エビータ」の狂言回し役だろう。「エビータ」はアルゼンチンが舞台。そして、ゲバラも実はアルゼンチンの生まれだ。しかし、ゲバラはアルゼンチン人でもキューバ人でもなく「ラテンアメリカ人」というアイデンティティを掲げていた。そして、キューバ革命にも命を賭けたのだ。理想の世界実現のために各国で戦い続けた、根っからの革命家だった。
 
そんなゲバラの生き様を、轟悠が熱い思いを秘めつつクールに演じる。雪組でトップスターを務めた後、2001年に専科に異動して男役を極め続けている轟にゲバラはぴったりの役柄だ。まず風貌からしてゲバラそのものである。

岩崎彌太郎(『猛き黄金の国-士魂商才!岩崎彌太郎の青春-』2001年 )、リンカーン(『For the people --リンカーン 自由を求めた男--』2016年)など、歴史上の人物で印象に残る役が多い人だ。しかも、キング牧師(『JFK』1995年)に白洲次郎(『黎明の風』2008年)、そしてゲバラと、まだ風化しきっていない時代の人物も演じてきた。

リアルな男らしさとガラスのような繊細さを併せ持った轟ならではの為せる技だ。ゲバラ衝撃の最期も史実どおりに描かれる。スモークの中で昇天するという夢々しいラストシーンが、良い意味で最も似合わない男役である。

『チェ・ゲバラ』('19年月組・ドラマシティ)より

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

その轟とがっぷり四つに組むことになるフィデル・カストロ役に挑戦したのが、入団6年目(公演当時)の風間柚乃だ。怪我で休演を余儀なくされた月城かなとに代わってのキャスティングだったが、そんな事情を完全に忘れさせてくれる大物ぶり。登場した瞬間、思わず息を飲む圧倒的な存在感を発揮する。

ゲバラのパートナーとなるアレイダ・マルチには天紫珠李。甘い恋人というより同志としてゲバラを支えるアレイダは、男役から転向した天紫によく似合っている。

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

出演者には若手が多いが、皆、日焼けした髭面のゲリラ戦士が板についている。カーキ色の戦闘服をカッコ良く着こなしてしまうのも宝塚の男役芸だ。

実在の人物も多く登場する。いつも陽気なゲバラの良き友、エル・パトホ(千海華蘭)、革命成功のキーパーソンであった農民ギレルモ・ガルシア(輝月ゆうま)など。地に足のついたお芝居がこの現代劇を支えている。

対峙するバティスタ大統領(光月るう)の食えない男ぶりが憎々しい。そしてマフィアのマイヤー・ランスキー(朝霧真)の色悪ぶり。この2人はゲバラ終焉の地ボリビアでも、それぞれ違う役で違う顔を見せるのでお見逃しなく。大統領配下の将校、ルイス・ベルグネス(礼華はる)は、この作品オリジナルの登場人物で、軍服姿も目を引く美味しい役どころだ。

1962年の「キューバ危機」の見せ方も気になるところだろう。世界中を緊迫させたこの一大事をどう描くのかと思いきや、ニューヨークタイムズの新聞記者ハーバート・マシューズ(佳城葵)の滑舌の良い語りでテンポよく見せていく。

密度濃い内容がわかりやすく描かれ、現代史の勉強にもなってちょっと得した気分。そして、どこまでも理想を追い続ける男の生涯は、「夢の世界」宝塚が扱うテーマとしても意外と相応しいのかもしれないと思わせてくれる作品だ。

文=中本千晶

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放送情報

『チェ・ゲバラ』('19年月組・ドラマシティ)
放送日時:2020年5月17日(日)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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