悪い田中圭にも注目！ムロツヨシ×古田新太主演の大人のコメディ

「できない役がない！」と思えるほど全方位な役を担える多才な俳優、ムロツヨシと古田新太。そんなふたりがW主演を務めたドラマが「Iターン」だ。「バイプレイヤーズ」、「きのう何食べた？」、「孤独のグルメ」など、ひとクセある作品でヒットを生み出しているテレビ東京「ドラマ24」枠発の作品である。

ムロツヨシ演じる狛江は、広告代理店の営業マン。上司の怒りを買い、本社からヤンキーとヤクザがあふれる修羅の街、阿修羅市の小さな支社に飛ばされる。社員2人の弱小支店の立て直しに奔走するが、仕事のミスをきっかけにヤクザの舎弟にさせられ、サラリーマンとヤクザという地獄の二重生活を送ることとなる...。

狛江は上にはシッポを振って、下にはとことん強気に出るという典型的なダメサラリーマン。物語前半ではそんな彼にイヤ気さえ感じるが、ドラマ「大恋愛～僕を忘れる君と」で、「どんどんイイ男に見えてくる！」といわしめたムロツヨシだけに、本作でも不本意ながら飛び込んだ任侠の道で、「命がけの仕事」の意味を身をもって知り、心持ちが変わっていく狛江が、だんだんとカッコいい男に見えてくるから不思議だ。

狛江を舎弟にしたヤクザ、「岩切組」組長・岩切猛(古田新太)は、昔気質。役とはいえ、古田新太が、毎回、遠慮なしにムロツヨシにビンタをくらわすのには驚かされる。しかし岩切は、顔は怖いがどこか人情があり憎めないところがある男。愛犬であるチワワの昌三を激愛しているのも、微笑ましい。

そして狛江がヤクザになるきっかけを作ったのが、金融業でのし上がってきた「竜崎組」組長・竜崎剣司(田中圭）。竜崎は、冷徹なインテリヤクザ。「おっさんずラブ」、「あなたの番です」で優しいイイ人のイメージができあがっていた田中圭が、スーツ、サングラス、オールバックとドスのきいた声でムロを攻め立てる。放送時、その迫力にムロが「田中圭でてきた、こわい圭でてきたっ、」とツイートし、"#こわい圭"というタグができたほどの激変ぶり。本作では、そんな"悪圭"にもご注目あれ。

田中圭だけでなく、助演陣が豪華なのも見どころだ。狛江が赴任した支店の営業マンに渡辺大知(黒猫チェルシー)、スナックのママに黒木瞳、ほかにも笹野高史、相島一之、手塚とおる、河原雅彦、般若(ラッパー)と豪華な面々が登場。中でも注目は、狛江の教育係になった岩切組組員・桜井役の毎熊克哉だ。朝ドラ「まんぷく」で"塩軍団"森本を演じた彼である。さらに各話のゲストに、木下ほうか、矢部太郎、阿佐ヶ谷姉妹、染谷俊之らが出演するなど、ゲストも助演陣も、とにかくクセが強いのだ。

ヤクザとしては岩切組と竜崎組の抗争に巻き込まれていき、サラリーマンとしては支店廃止の宣告を受けて崖っぷちに立たされる狛江。果たして彼の行く末は？後半は、クライムアクションの様相。しかし、決して笑いを忘れない見事な脚本と、芸達者な出演陣で魅せてくれる、第一級の大人のコメディ作品だ。

文＝坂本ゆかり

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