ジュリーこと沢田研二が体現!働くことの意味を問う社会派ドラマを再見すべき理由

山田洋次監督がメガホンを取り、2021年の公開が予定されている映画『キネマの神様』。松竹映画100周年記念作品である同作において、主役の一人であった志村けんが3月に逝去し、その代役として白羽の矢を立てられたのが沢田研二だ。かつて同じ事務所の先輩後輩の関係だった沢田と志村は、「8時だョ!全員集合」や「ドリフ大爆笑」などの番組で何度も共演し、互いに尊敬し合う仲だったのは広く知られている。

『幸福のスイッチ』(2006年)以来となる沢田の映画出演だが、さらに山田洋次監督作への出演となると、『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』(1982年)以来38年ぶりとあって、否が応でも同作への期待は高まっている。

■俳優としての存在感を増していった沢田研二の必見作とは?

1967年にザ・タイガースのボーカルとして芸能界デビューを果たした"ジュリー"こと沢田研二。GSブーム真っ只中の当時、映画デビューを飾った『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』(1968年)などのザ・タイガース主演映画でも、人気者ジュリーの熱狂ぶりが描かれている。1970年代に入り、ソロになってからは俳優としても大いに活躍。初主演映画となった『炎の肖像』(1974年)では、自らの分身とも言える通称ジュリーと呼ばれるロック歌手を演じたものの、アイドルのイメージを脱し、ワイルドでダーティーな大人の男を演じて話題を呼んだ。

ジュリーが情熱的なラブシーンも披露した問題作『炎の肖像』(衛星劇場にて放送中のリクエストスペシャル もっと、ジュリーより ※作品はカラー)

(C)日活

さらに、今もカルト的な人気を誇る名作『太陽を盗んだ男』(1979年)で、原爆を製造する中学教師役という異色のキャラクターを演じたことが一つの転機となり、1980年代以降は俳優として円熟味を増した演技を見せていった。

特にステージ上での圧倒的な色気を封印し、どこにでもいそうなごく平凡な男を沢田が演じると何とも言えない妙味を感じさせ、実に味わい深い演技を見せてくれた。そんな作品の一つが、NHKドラマスペシャル「幸福な市民~勤勉とは?」(衛星劇場にて10月3日放送)だ。

「幸福な市民~勤勉とは?」

(C)NHK

「幸福な市民~勤勉とは?」

(C)NHK

■「本当の幸福とは何か?」沢田研二が葛藤する男を熱演

同作品は、1989年にNHKで放送された社会派ドラマで、沢田は自分を押し殺して働くことに耐えかねて銀行を退職し、「食えるだけ働ければいい」と気ままな保険調査員に転職した男を演じている。「人間にとって本当の幸福とは何か?」という重厚なテーマをはらんだ骨太の作品で、第27回ギャラクシー賞奨励賞と第8回向田邦子賞をダブル受賞。哀愁のある沢田の演技にも注目が集まった。

「幸福な市民~勤勉とは?」

(C)NHK

30年以上も前の作品ながら、現代にも通ずる社会的テーマが心に響き、人生の奥深さを考えさせられる良作であり、当時41歳だった沢田も演技者としての円熟味を最大限に発揮している。

本作には、元大企業の社員でありながら、身をやつして働かずに食べ物を万引して暮らす男・山下(麿赤児)が物語のキーマンとして登場する。沢田演じる保険調査員の雲居鶴彦は、そんな山下の生き方に、反感するどころか、むしろ共感を覚えてしまうのだ。拝金主義に一石を投じるような描写もあるが、格差が叫ばれる現代社会にも通じるテーマにもなっている。

「幸福な市民~勤勉とは?」

(C)NHK

単発作品ゆえに、放送後は話題に上る機会が少なかったが、ドラマ史にある種の足跡を記した作品であることは間違いない。30年前のジュリーの演技が、令和を生きる今の我々に何を訴えてくれるのか。彼のファンはもちろん、社会派ドラマやヒューマンドラマが好きなら、必ず満足する作品と言えるだろう。若い世代にもぜひ見てほしい一作だ。

文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)

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放送情報

幸福な市民~勤勉とは?
放送日時:2020年10月3日(土)19:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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