吉沢亮、主演と並び立つ存在感が作品に与えたもの

連続テレビ小説「なつぞら」(2019年、NHK総合ほか)出演が話題を呼び、2021年2月14日(日)スタートのNHK大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)では主人公の渋沢栄一を演じる吉沢亮。

彼が多くの若手俳優がしのぎを削る中で頭一つ抜けた存在となったのは、クールで端正な容姿もさることながら卓越した演技力があってこそのものだろう。そんな吉沢の演技力が堪能できる作品が映画『キングダム』だ。

同作品は原泰久の同名人気漫画を実写化したもので、紀元前の中国春秋戦国時代を舞台に天下の大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の少年と、中華統一を目指す若き王の姿を壮大なスケールで描く歴史エンターテインメント。吉沢は、主演の山崎賢人(※「崎」は正しくは「立さき」)演じる主人公の信の幼なじみ・漂と秦国の若き王・嬴政(えいせい)の2役を熱演。この作品が2021年1月16日(土)に映画・チャンネルNECOで放送される。

中国で撮影された日本では実現し得ない圧倒的な映像と迫力のあるスピード感あふれるアクション、そして山崎賢人をはじめとする吉沢亮、長澤まさみ、橋本環奈、大沢たかおといった豪華過ぎる役者陣の演技など、"エンターテインメント超大作"の名にふさわしい見どころが満載の本作品。中でも、山崎の演技は圧巻で、時代の奔流の中で夢に向かって力強く邁進する信を原作のキャラクターそのままに演じている。

(C)原泰久/集英社 (C)2019映画「キングダム」製作委員会

圧倒的な演技で輝きを放つ山崎に対し、吉沢は負けずとも劣らない存在感を放っている。戦争孤児と王という両極端の立場の若者が出会い、互いにリスペクトしながら肩を並べて同じ目的を達成するために奮闘する。そんなストーリーであるため"両雄並び立つ"のが作品の肝なのだが、この必要十分条件を満たしているからこそ原作の持つ魅力を損なうことなく映像化に成功したと言えるだろう。

吉沢の素晴らしいところといえば、やはり2役を鮮やかに演じ切っているところだ。2役自体それほど珍しいことではないが、同作で吉沢が見せる2役は次元が違う。というのも、よくある2役は髪形、衣装、メイクなど外見的な差異を施して観る者に違う人物であることを伝える演出がなされているが、漂と嬴政は衣装こそ違えど(漂は嬴政の替え玉として王宮に召し上げられたため、衣装が同じシーンもある)髪形は同じで、戦災孤児の漂、クーデターから命からがら逃げている嬴政共に顔に汚れが付いているなど、外見的な違いはない。所作に関しても、追われているため嬴政の"王ならでは"の動きを披露するシーンも少なく、動きでギャップをつけるのも難しい。しかし、劇中で2人は全くの別人に見えるのだ。

(C)原泰久/集英社 (C)2019映画「キングダム」製作委員会

熟視してもらえば分かるが、その主因は表情が違うことにある。漂の場合は信と同じく戦で武功をあげて大将軍になるという夢を抱いているためギラギラした目をしており、目標を見据えた野心がのぞく"雑草魂"にあふれている。一方、嬴政の場合は中華統一という遥かな夢をゴールに置き、そのためにクーデターの鎮圧に腐心するという粛然で厳然とした魂が厳存している。さしずめ目の奥に宿る炎は、漂は赤色、嬴政は青色といったところだ。

「夢に向かって生きる」という同じ生き方の2人の内面からあふれ出るものの違いを表情一つで演じ分け、2役を完璧に演じ切る吉沢の演技力の凄まじさを感じつつ壮大な「エンターテインメント超大作」を堪能してみてほしい。

文=原田健

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放送情報

キングダム
放送日時:2021年1月16日(土)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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