大ヒットしたドラマ「おっさんずラブ」以降、"おじさん"に焦点を当てたドラマが作られている。今年の1月クールの中にも「おじさまと猫」や「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」などがしっかりラインアップされており、まだしばらくこの流れは続きそうだ。
近年の"おじさん"ドラマブームの中では、「デザイナー 渋井直人の休日」(2019年)の光石研のように、それまで名脇役として活躍することが多かったベテラン俳優を主役に起用するというケースも珍しくない。「ゲゲゲの女房」(2010年)や「僕のヤバイ妻」(2016年)、「隣の家族は青く見える」(2018年)など挙げたらキリがないほどの名作ドラマを支えてきた俳優・眞島秀和もこの"おじさん"ドラマで話題を集めた。
眞島が出演した作品は、漫画家のツトムによる同名漫画を実写化したドラマ「おじさんはカワイイものがお好き。」。眞島はダンディで仕事もデキる"イケおじ"課長の小路三貴に扮するのだが、小路は「カワイイものが好きすぎる」という周囲が持つ自分のイメージとかけ離れた秘密をひた隠しにしながら生きていた。
推しキャラである犬のキャラクター・パグ太郎をこよなく愛し、一人暮らしの自宅にはぬいぐるみやコーヒーカップ、歯ブラシ、ティッシュBOXなどパグ太郎グッズが散見される。宅配便が届けば、スマートに捺印、配達員を労うデキる男っぷりを見せるのだが、荷物を開封するやいなや中身のパグ太郎ブランケットに悶絶。目尻を下げ、会社では絶対に見せないような表情でブランケットに頬ずりをしてしまうのだ。
定期的にパグ太郎から"カワイイ"を補給したい小路は会社での推し活にも余念がなく、鞄の中でキーホルダーをそっと見つめたり、「眼鏡拭きなら、ケースの中に入れて密かに推せる...!」と思い付いたりと、苦労しながらも楽しむ様子が微笑ましい。
カワイイものを世を忍び愛でていた小路だが、心の奥底では「この"好き"な気持ちを誰かと共有したい!」と思っていた。そんな小路の前に現れたのが、今井翼が演じる仕事で繋がりを持ったデザイナー・河合ケンタだ。中目黒に住んでいるダンサー的な風貌である河合の推しキャラは「くまのがっこう」のジャッキー。
この2人が心を通わせファンシーショップを巡ったり、ラテアートコーヒーを飲んだりするのだから、見ていてついクスリと笑みがこぼれてしまう。劇中ではその他にも、会社で小路を一方的にライバル視するものの実は大のネコ好きである鳴戸(桐山漣)や、少女漫画家を目指していながら母親に言い出せない小路の甥っ子・真純(藤原大祐)らギャップのある人物が次々と登場する。
そんな彼らの出会いや小競り合い、交流を眺めていて、見せてくるのは「ギャップがあったって自分の"好き"に胸を張ればいいじゃないか」ということ。誰だって1つくらいは持っている「実は○○が好きなんだよね」というなかなか人には打ち明けられない気持ちを、小路たちは後押ししてくれる。
長年の経験に裏打ちされた眞島の確かな演技力が、コミカルに花開き、共感と勇気を得られる本作は、3月に日テレプラスで放送される。彼の新境地を確かめてみてはいかがだろう。
文=津金美雪
放送情報
おじさんはカワイイものがお好き。
放送日時:2021年3月9日(火)14:00~
チャンネル:日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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