「おかえりモネ」で好演中、坂口健太郎がポテンシャルを開花させた「模倣犯」ピース役

NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」で、若手医師・菅波光太朗を演じる坂口健太郎が話題だ。無愛想で気難しい性格をのぞかせながらも、誠実で優しい内面を滲ませる深みのある演技にハマる視聴者が続出している。そんな坂口は、近年さらに演技力が向上し、難役にも果敢に挑んでいるという印象が強い。映画「64-ロクヨン-前編/後編」では日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しており、ドラマ「シグナル 長期未解決事件捜査班」など話題作に次々と出演している。

坂口の演技が一皮むけた契機の1つは、2016年にテレビ東京系で放送された「宮部みゆきサスペンス模倣犯」ではないかと個人的に思っている。同作は、宮部みゆきの代表作である長編ミステリーを4時間超のボリュームで、原作に忠実に映像化したもの。中谷美紀演じるルポライター・前畑滋子を主人公に豪華俳優陣が集結した意欲作だ。

写真左から坂口健太郎、中谷美紀(「宮部みゆきサスペンス模倣犯」より)

(C)テレビ東京

原作は過去に映画化もされており、映画では中居正広が演じたピースこと網川浩一役を坂口が演じている。原作を知っている人ならご承知の通り、ピースは物語の最重要人物である。それも一筋縄ではいかない、頭脳明晰にして複雑怪奇な男だ。当時の坂口は、NHKの「とと姉ちゃん」での植物オタク学生・星野役や、「重版出来!」での心優しいコミック営業マン・小泉役など、ナイーブで繊細な好感度の高い役柄が多かった。

しかし、以前から宮部作品が好きだったという坂口は、高校時代に原作を読んで夢中になったということで、「一筋縄ではいかない役」と感じながらも、「自分なりのピース、坂口健太郎の"網川"を探しながら演じました」と、この難役に果敢に挑戦した。

(C)テレビ東京

ピースのような心に闇を持った人物に挑むには、真面目に気持ちを汲み取ろうとするのは難しい。事実坂口も「今まで演じてきた役の中で一番寄り添えない役でした」と語っている。だからこそ、「現場に入って感じるものや(中谷演じる)滋子さんとの空気感を大切にして」演じたそうだ。

このアプローチこそが、彼の深みのある演技の神髄であるように思える。"共演者との空気感を大切にする"という彼の言葉からは、彼が「感じる役者」であることがうかがい知れる。「感じて」演じるからこそ、複雑な心情を巧みに表現できるし、視聴者の強権を得られるのだろう。

制作サイドは、同作における坂口起用の理由について、「俳優として、時代を掴まえる勢いがあること」に加えて、「魅力的な笑顔の裏側に、深い闇を抱えた怪物的な男を表現するポテンシャルがあること」とコメントしている。本作を見れば、大いにうなずけるはずだ。

比類のない知能犯によって仕組まれた連続誘拐殺人事件を描いた「宮部みゆきサスペンス模倣犯」は、7月17日に映画・チャンネルNECOで放送される。中谷美紀、満島真之介、橋爪功、岸部一徳、吉田鋼太郎ら共演陣も豪華な本作。俳優・坂口健太郎のポテンシャルが開花した作品として注目したい。

文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)

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放送情報

宮部みゆきサスペンス模倣犯 前篇
放送日時:2021年7月17日(土)19:30~
宮部みゆきサスペンス模倣犯 後篇
放送日時:2021年7月17日(土)21:40~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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