32年ぶりに再演!雪組新トップスター・彩風咲奈が主演した宝塚歌劇『炎のボレロ』

『炎のボレロ』より
『炎のボレロ』より

雪組・梅田芸術劇場メインホール公演『炎のボレロ』がタカラヅカ・スカイ・ステージにお目見えする。1860年代、フランスの支配下にあるメキシコが舞台の物語である。主演は、このたび雪組の新トップスターに就任したばかりの彩風咲奈だ。

メキシコで大農園を営む貴族・カザルス侯爵家の次男であるアルベルト(彩風咲奈)は父と兄をフランス軍に惨殺され、首謀者であったブラッスール公爵への復讐を心に誓っている。久しぶりにメキシコに戻って来たアルベルトは、お嬢様ながら自由奔放に振る舞うカテリーナ(潤花)に出会う。じつはカテリーナはメキシコ貴族ながら唯一フランスに恭順の意を示したドロレス伯爵の娘だったが、2人は互いに惹かれ合っていく。そして、共和派の仲間たちとの交流の中で、アルベルトは私怨ではなく大義のために生きたいと考えるようになる。

1988年に星組トップスター日向薫のお披露目公演として初演された本作品。柴田侑宏は当て書き上手で知られ、この作品も元々は初演メンバーに当てて書かれている。こうした作品を違うキャストで再演するのは難しいものだが、今回は再演メンバーの持ち味にもうまくはまっていた。

『炎のボレロ』に出演した彩風咲奈

(C)宝塚歌劇団  (C)宝塚クリエイティブアーツ

初演の幕開き、長身のスター日向薫が真っ白な衣装に身を包んで登場する姿が印象的だったが、スタイル抜群の彩風にも、この衣装がよく似合う。「一生懸命生きていこう」というちょっと気恥ずかしくなるようなフレーズも、彩風の誠実な芸風にうまくはまっていた。

彩風は本年6月、同じく柴田作品の再演となる『ヴェネチアの紋章』にも主演し、好評を博した。"宝塚の古典"といえるような王道の作品がよく似合うスターだ。その一方で、『ルパン三世 ―王妃の首飾りを追え!―』の次元大介や『るろうに剣心』の斎藤一など、漫画やアニメを舞台化した作品の人気キャラクターも好演してきた。そんな真逆の魅力を備える彩風が8月に開幕するトップお披露目公演で演じるのも「『CITY HUNTER』-盗まれたXYZ-」の冴羽獠である。

天真爛漫なヒロイン・カテリーナも初演の南風まいに当てた役だろうが、今回演じた潤花にもよく似合っていた。潤はこの作品の後に宙組へ組替えし、新トップ娘役として活躍している。思いがけず本作は、彩風・潤コンビの見納めという貴重な舞台にもなった。

仲間と共に新たな国づくりを目指すアルベルトに立ちはだかるのが、フランス軍のジェラール・クレマン大尉(朝美絢)である。腐敗した宮廷に疑問を持ちながらも、職務を全うしようとする人物だ。ジェラールも初演の紫苑ゆうに当てて書かれた役柄だろうが、ちょっと斜に構えた雰囲気や、健気に想いを寄せるモニカ(彩みちる)へのクールな接し方、そして何より麗しい軍服姿が朝美にもよく似合っていた。

共和派のリーダー、フラミンゴを演じる縣千が熱い闘士としての存在感を示す。宿敵ブラッスール公爵の久城あす、カテリーナの父ドロレス伯爵の奏乃はると、謎の従僕タイロンの真那春人らが、物語の鍵となる役どころを色濃くみせる。雪組らしい細かい作り込みを感じる群衆芝居の場面も隅々まで見逃せない。

この作品は、もともとは雪組選抜メンバーによる全国ツアーとして昨年5月に上演されるはずだったが、コロナ禍で中止となり、梅田芸術劇場での上演も一度延期となっている。初日の幕が開くまでに、すでに波乱のドラマがあったことでも忘れ難い作品だ。

文=中本千晶

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放送情報

『炎のボレロ』('20年雪組・梅田芸術劇場)
放送日時:2021年8月8日(日)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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