歌、踊り、芝居の三拍子がそろう宝塚星組トップコンビ・礼真琴舞空瞳の大劇場お披露目公演

『眩耀の谷 ~舞い降りた新星~』より
『眩耀の谷 ~舞い降りた新星~』より

星組のトップコンビ礼真琴・舞空瞳の大劇場お披露目公演がタカラヅカ・スカイ・ステージで放送される。幻想歌舞録『眩耀の谷』は、紀元前800年頃の中国、周の時代の物語である。周の大夫・丹礼真(礼真琴)は国のために力を尽くしたいと張り切る若者だ。周の宣王(華形ひかる)は、「眩耀の谷」と呼ばれる地に黄金と薬草があると聞き、管武将軍(愛月ひかる)にその探索を命じる。それは、周が支配下に置いたブン族(※「ブン」はさんずいへんに文)が住まう「亜里の地」の何処かにあるはずだった。

将軍を崇拝する礼真は、「眩耀の谷」を見つけるべく意気揚々と亜里の地に分け入るが、そこで出会った「謎の男」(瀬央ゆりあ)にいざなわれ、盲目の舞姫・瞳花(舞空瞳)と出会う。こうしてブン族の人々とかかわっていく礼真の心のうちで、信じてきたはずのものが揺らぎ始める...。

作・演出・振付を手がけるのは謝珠栄だ。はからずも、「ほんとうのこと」を見極める力が問われる今の時代に重なる、骨太な作品に仕上がっている。

礼真琴&舞空瞳(『眩耀の谷 ~舞い降りた新星~』より)

(C)宝塚歌劇団  (C)宝塚クリエイティブアーツ

丹礼真を演じる新トップスター・礼真琴は、歌、踊り、芝居の三拍子そろったスターとして早くから脚光を浴びてきた星組の御曹司だ。今年に入ってからも『ロミオとジュリエット』のロミオ役や、舞浜アンフィシアターでのコンサート『VERDAD!!』でその実力をいかんなく発揮して客席を圧倒し続けている。

この作品でも、登場シーンの朗々とした歌声で観客を一気に惹きつける。良くも悪くも純粋な若者が苦難を乗り越え、頂点に立つ者としての器を身につけていく、その成長過程が、礼自身が歩む道のりにも重なってみえる。

礼真の成長に大きな影響を与えるのが、管武将軍(愛月)と「謎の男」(瀬央)だ。心の内に色々な想いを秘めながらも、一国の将軍としての役割を全うしようとする管武将軍のハラ芸は、男役としての引き出し豊富な愛月にしか見せられないと言ってよいだろう。飄々とした振る舞いの中に神秘と風格を醸し出す「謎の男」も瀬央らしい役どころで、礼と迫真のぶつかり合いを見せる。あちこちに散りばめられている含蓄のある台詞や歌詞にも耳を澄ませたい。

新トップ娘役の舞空瞳は、まだ入団6年目だが、これまた歌、踊り、芝居の三拍子がそろい、礼とがっぷり四つに組む姿も頼もしい。舞空が演じる瞳花は盲目の舞姫という難しい役どころだが、その表現力豊かな舞からは、踊りだけでここまで伝わるものがあるのかと思い知らされる。

オリエンタルなメロディラインの楽曲、洋物の輪っかのドレスとはまた違う衣装の華やかさなど、中国物ならではの見どころも満載だ。また、中国舞踊も随所に織り込まれ、男役による勇壮な剣舞の迫力、衣装をひるがえして舞う娘役たちのたおやかさ、どちらも振付家・謝珠栄の本領発揮である。

この作品はコロナ禍のまさに「渦中」をくぐり抜けた作品としても忘れ難い。宝塚大劇場での初日が昨年2月7日。ところが、2月末より公演は中止となり(3月9日の千秋楽のみ実施)、本来であれば3月27日に初日を迎えるはずだった東京公演も、7月31日にようやく開幕した。

今回放送されるのは、東京公演千秋楽の映像である。紆余曲折を経て千秋楽を迎えることができた出演者一人ひとりの表情もまた、見逃せないものになりそうだ。

文=中本千晶

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放送情報

『眩耀の谷 ~舞い降りた新星~』('20年星組・東京宝塚劇場・千秋楽)
放送日時:2021年9月19日(日)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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