坂口健太郎の目に宿した光から見る「演技の深み」病院内で凶悪犯に立ち向かうミステリー

シャープな目と白い肌が印象的な"塩顔"ブームの火付け役となって人気を博し、さまざまな役を演じて役者として脂がのってきた坂口健太郎。そんな坂口の"演技の深み"が感じられる作品が映画『仮面病棟』(2020年)だろう。

坂口健太郎と永野芽郁が出演する映画『仮面病棟』
坂口健太郎と永野芽郁が出演する映画『仮面病棟』

(C)2020 映画「仮面病棟」製作委員会

同作品は、現役医師作家の知念実希人のベストセラー小説を映画化したもので、病院を舞台にした究極の謎解き体感ミステリー。速水(坂口)が一夜限りの当直医として勤務する田所病院に、ピエロの仮面をつけた凶悪犯が人質の女子大生・瞳(永野芽郁)を連れてやってくる。病院を占拠した犯人の下、なんとか脱出を試みる速水らは次々と不可解な謎に遭遇する、というストーリーだ。

元精神科病院であるため窓や院内に鉄格子や扉などがあり、犯人に電話線を切断され、スマホも回収されるという"密室"設定の中、同時多発的に掘り起されるさまざまな謎を解いて真相に迫っていくというハラハラドキドキの展開や、全ての謎が1つに収束していく筋書き、ラスト30分の衝撃の "大どんでん返し"など、エンターテインメントとして大いに楽しめる。

(C)2020 映画「仮面病棟」製作委員会

(C)2020 映画「仮面病棟」製作委員会

そんな中で、坂口の演技は見どころの1つだ。坂口が演じる主人公の速水は、ミステリーにおける"探偵"のポジションで、どれだけ観客を感情移入させられるかが肝となる役どころなのだが、"一夜限りの当直"ゆえの勝手がわからない様子や医師として瞳を守ろうとする姿、犯人に対する毅然とした態度などで、"観ている者のアバター"としての役割を全うしており、観客を作品世界に誘引する効果を増幅している。

何より圧巻なのは、物語が進むにつれて強くなる速水の目の光だ。速水は事件の3カ月前に結婚間近の恋人を事故で亡くしており、そのショックから休職中で、この日の当直は恋人の兄であり大学時代の先輩・小堺(大谷亮平)の頼みであったため、やむなく引き受けたという背景があり、冒頭からどこか投げやりな雰囲気をまとい、目の光は失われている。しかし、犯人に撃たれた瞳の治療や生き延びるために奮闘するにつれ、次第に「大切な人を失っても生きなければならない」と目に光を取り戻していく。

そんな速水の変化を、坂口は滑らかに表現。何かをきっかけに変えるのではなく、徐々に目の光を強めていくのだ。立てこもった凶悪犯、予期せぬ殺人の発生といった異常な環境下でも、心の芯の部分をしっかりと繊細に表すことで"ミステリーの探偵役"ではなく、1人の人間を熱演。だからこそ、観る者はその心情に惹きつけられ、知らぬ間に感情移入してしまう。それをバラバラな順番で撮っていく撮影で成し得ているのだから、傑出した演技力であることは言うまでもないだろう。

原作から継承された魅惑のミステリー要素にどっぷりと漬かりながら、俳優・坂口健太郎が目に宿した"演技の深み"を味わってみてほしい。

文=原田健

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放送情報

仮面病棟
放送日時:2021年12月4日(土)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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