コロナ禍による公開延期という苦難を乗り越え、見事な完結を見せた映画『るろうに剣心』シリーズ。2010年代を代表する大ヒットシリーズになった要因を、映画ライター・松本侃士さんに解説してもらった。
第1作以降、作品を重ねるごとに盛り上がりを見せた『るろうに剣心』シリーズ。何が従来の作品と違ったのだろうか。
「シリーズ全体に対する印象は、日本が世界に誇る、堂々たるエンタメ作品がついに生まれた、ということです。しかも『日本映画にしては...』という枕ことばや言い訳を付ける必要なく、そう力強く断言できる作品だと思います」
シリーズの魅力は大きく分けてアクションとドラマの2つにあると松本さんは指摘する。
「アクションについては、大友啓史監督や、アクション監督の谷垣健治さんをはじめとした全ての製作陣、俳優に一切の妥協がありません。限界を超えようとするストイックさや、想像を絶するような試行錯誤の積み重ねが、見事に結実しています。時代劇的な殺陣が根幹にありつつも、いわゆるチャンバラではないんですよね。香港やタイのバイオレンス映画にも由来するようなスピーディーな動き、そこに加わる肉弾戦や銃撃戦、パルクールなど。まばたきできないようなアクションの連続でした。ドラマという点では、単なる勧善懲悪ではないことが一つの特徴です。また、生き方や罪を問う原作の重層的な物語をトレースするだけに終わらず、実写映画としてのリアリティーをもって描いています。『龍馬伝』を経て王道エンタメ大作の『るろうに剣心』に挑戦した大友監督の役割も大きいですね。原作の『新しい時代を迎える世の中のゆがみ、その混迷の中で翻弄される人々が織り成す痛切なドラマ』という側面に着目して、物語により深みを与えています」
特に注目してほしいのが、第4作『るろうに剣心 最終章 The Final』の描写だ。
「この手の映画は通常、役者のセリフなどを通して物語が展開されると思いますが、『るろうに剣心 最終章 The Final』の中盤以降は、個々のアクションの中でドラマが紡がれます。キャラクターの魂と魂がぶつかり合うアクションの中の所作や振る舞いを通して感情を描き、それによって物語が前に進む...すさまじい境地にまで到達していました。だからこそ本作が日本アクション映画の新しい基準になったと思いますし、大ヒットしたことも不思議ではありません。俳優・スタッフが本作に込めた魂が、ダイレクトに観客に伝わるという感動があったのだと思います」
まつもと・つよし●ロッキング・オンに入社し、編集やライティングなどを経験。2018年の転職後はメディア運営を手掛ける一方、映画や音楽にまつわる記事を多数執筆するなどして活躍。
取材・文=山崎ヒロト(Heatin' System)
放送情報
るろうに剣心
放送日時:2022年1月22日(土)12:30~
るろうに剣心 京都大火編
放送日時:2022年1月22日(土)15:00~
るろうに剣心 伝説の最期編
放送日時:2022年1月22日(土)17:30~
るろうに剣心 最終章 The Final
放送日時:2022年1月22日(土)20:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
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