三浦大輔演出で人間のエゴをあぶり出す!岡田将生が舞台で演じた「売れない俳優」

「物語なき、この世界。」
「物語なき、この世界。」

現代人の抱える悲哀やむき出しの欲望をあぶり出し、センセーショナルを巻き起こしてきた劇作家の三浦大輔。暴力やエロスといった過激な題材と、ドキュメンタリーのようにリアルで妥協のない、時には冷徹ですらある演出によって見る者の感性を揺さぶってきた。

そんな三浦が3年ぶりに書き下ろした舞台が、2月11日(金)にWOWOWライブにて放送される「物語なき、この世界。」だ。2021年の夏に公演されたこの作品は、欲望が渦巻く新宿・歌舞伎町のうらぶれた風俗店で、元同級生の男2人が10数年ぶりに再会を果たし、やがて彼らの身に大きな"事件"が降りかかる...という物語だ。

岡田将生と峯田和伸が初共演を果たした注目の舞台「物語なき、この世界。」
岡田将生と峯田和伸が初共演を果たした注目の舞台「物語なき、この世界。」

主人公となる2人の男は、ドラマの主人公に憧れる売れない俳優・菅原裕一と、人生にドラマを求める売れないミュージシャン・今井伸二。

自分の人生にはドラマなんて起きないと諦観していた2人に訪れる出来事を通して、人間のエゴをあぶり出し、深層に迫っていく内容で、「『人生は物語だ』という言葉も都合のいい理屈、所詮は自分の人生をドラマチックに彩りたがる人間のエゴ」と、今作についてコメントした三浦の言葉にもあるように、現代人のあり方に対する、どこか突き放した視点が感じられる。

三浦は『愛の渦』(2014年)や『娼年』(2018年)など、映画監督としても積極的に活躍しており、今回の放送における編集も三浦自身が担当。客席からは見られないアングルも駆使するなど、映画で培った映像作家としての手腕も発揮し、よりアップデートされた作品に仕上げている。

「物語なき、この世界。」
「物語なき、この世界。」

そんな三浦の作家性が強く打ち出された舞台作品ということもあり、キャストにも豪華な面々が名を連ねた。初共演となった岡田将生と峯田和伸が、売れない役者と売れないミュージシャンという現実とは真逆の役柄に扮している。

もともと映画『何者』(2016年)で三浦作品に参加して以降、再び三浦と仕事がしたかったという岡田が演じる俳優・菅原は、同棲する恋人の稼ぎに依存するヒモでありながら風俗に通う軽薄な男。岡田曰く「空洞のような、虚無感を感じさせる男」であり、どこか温度を感じさせない眼差しや微笑みなどで菅原の心情を巧みに表現。風俗店での一幕など、これまでの清廉なイメージをかなぐり捨てるような新たな一面を披露している。

一方、ミュージシャンの今井を演じたのは、映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2010年)や舞台「母に欲す」などで三浦作品に度々出演している峯田。ボーカルを務める銀杏BOYZが、"青春パンク"と称されるように青臭い感情を表現してきただけあり、今作でも売れないミュージシャンという現状に対する鬱屈した感情をナチュラルに表現。人間臭さの漂う姿がなんとも印象的に映るはずだ。

「物語なき、この世界。」
「物語なき、この世界。」

そんな2人を支える共演者も豪華な布陣で、菅原の恋人役の内田理央や、今井の後輩役の柄本時生といった個性豊かな才能が集結。中でも、物語の中核を担うスナックのママ役に扮した寺島しのぶは、ニヒルな表情で客に対して達観した言葉をかけたかと思えば、感情を爆発させるかのような慟哭を見せたりと、変幻自在の演技で歌舞伎町を生き抜いてきた女性を体現。2年ぶりの舞台にも関わらず堂々とした存在感はさすがの一言だ。

スキャンダラスな題材で、世の中の化けの皮を剥ぎ、人間の本来の姿を浮き彫りにしていく三浦の魅力が詰まった物語を支える俳優たち。ごまかしのきかない舞台という場だからこそ、その実力の高さや覚悟をまざまざと感じることができるはずだ。

文=HOMINIS編集部

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放送情報

物語なき、この世界。
放送日時:2022年2月11日(金)21:00~
チャンネル:WOWOWライブ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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