新・雪組トップコンビ彩風咲奈朝月希和のプレお披露目公演『ヴェネチアの紋章』!若手の目覚ましい活躍が頼もしい!

彩風咲奈
彩風咲奈

雪組トップコンビ、彩風咲奈・朝月希和のプレお披露目公演『ヴェネチアの紋章』がタカラヅカ・スカイ・ステージに登場する。1991年に元・花組トップコンビ、大浦みずき・ひびき美都のサヨナラ公演として上演された作品である。原作は塩野七生の『小説イタリア・ルネサンス1 ヴェネツィア』であり、初演時の脚本・演出は柴田侑宏だ。今回の再演では演出を謝珠栄が担当した。楽曲もほぼ一新し、新たな演出も加えられた。

時は16世紀前半のイタリア、ハプスブルク帝国とオスマン帝国の勢力争いの狭間にいるのが、この作品の舞台であるヴェネチア共和国だ。元首の息子アルヴィーゼ(彩風咲奈)とヴェネチア名家の令嬢リヴィア(朝月希和)の恋物語が、緊迫した国際関係を背景にしながら展開する。

朝月希和
朝月希和

原作/塩野七生『小説 イタリア・ルネサンス1ヴェネツィア』(新潮文庫) ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

アルヴィーゼ(彩風咲奈)は元首の息子でありながらも、庶子であるため貴族の身分が与えられなかった。したがって政治家としての立身出世も望めず、愛するリヴィア(朝月希和)との結婚も許されない。リヴィアは名家の奥方となったが、心秘かにアルヴィーゼのことを思い続けている。そんな二人が再会し、情熱的にモレッカを踊るところから物語は始まる。

アルヴィーゼは、リヴィアを妻に迎えるに相応しい地位を得るべく、オスマン帝国の先鋒となって戦い、ハプスブルク帝国からハンガリアを奪還し、その王位を手に入れるという野望を抱く。彼を突き動かすのは、貴族の「紋章」を与えてくれなかった祖国ヴェネチアへの復讐の念ともいうべきものだ。

サン・マルコ寺院を背景にゴンドラが行き交う舞台セットが、水の都ヴェネチアらしい雰囲気を醸し出す。エキゾティックな踊り子のダンスシーンで、舞台を一瞬にしてオスマン帝国の首都コンスタンチノープルに移すのも、タカラヅカらしい手法である。

彩風演じるアルヴィーゼは、端正なたたずまいで穏やかな雰囲気をたたえつつ、内に秘めた情念を次第にあからさまにしていく様が劇的で、壮絶な最期も印象に残る。いっぽう入団12年目という遅咲きでトップ娘役になった朝月も、愛する男性のためひたすら耐え忍ぶ一途な女性がよく似合う。

古典的な大芝居もしっくり来る二人だが、その後『CITY HUNTER』では冴羽獠と槇村香として漫画から抜け出たような名コンビぶりを見せ、東京宝塚劇場にて上演中の『夢介千両みやげ』では夢介とお銀という朗らかで愛情あふれるカップルを演じている。守備範囲が広く変幻自在なトップコンビである。

アルヴィーゼの親友マルコ・ダンドロを演じるのが、『夢介千両みやげ』を最後に退団する綾凰華だ。常に温かく、しかし冷静にアルヴィーゼを見守り続ける存在であり、狂言回し的な役割も務める。派手な見せ場があるわけではないが、さりげない存在感が心地良く、退団が惜しまれる。

高級遊女オリンピア(夢白あや)が、凛とした立ち居振る舞いで、他の遊女たちとは格が違うところを見せる。元首としての責務と、息子への愛情との間で揺れるアンドレア・グリッティ役には真那春人が挑む。

アルヴィーゼに憧れる「はぐれ組」ヴィットリオ(諏訪さき)・ジョヴァンニ(眞ノ宮るい)・エンリコ(彩海せら)は、重めのストーリーの中で観客をホッとさせてくれる三人組だ。アルヴィーゼに尽くす従僕カシム(一禾あお)がいじらしく、ヴェロニカ(莉奈くるみ)とのコミカルなやりとりも微笑ましい。

新トップコンビのプレお披露目らしく、若手の目覚ましい活躍が新鮮で頼もしい。古き良き名作の味わいと新しい風が同時に味わえる、一挙両得の舞台である。

文=中本千晶

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放送情報

ヴェネチアの紋章('21年雪組・全国ツアー)
放送日時:2022年5月8日(日)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE 
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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