原田知世のフレッシュさ・ピュアさが名作「時をかける少女」にもたらしたもの

今年、デビュー40周年アニバーサリーツアーを開催した原田知世。原田といえば、『時をかける少女』(1983年)でセンセーショナルな映画デビューを果たしたことは誰もが知るところだろう。同作で原田は、第7回日本アカデミー賞ほか各映画賞の新人賞を受賞し、薬師丸ひろ子に次ぐ大型新人として話題となった。また、松任谷由実が楽曲提供した主題歌「時をかける少女」も大ヒットし、同年の「NHK紅白歌合戦」にも出場。

花を愛でる原田知世
花を愛でる原田知世

(C)KADOKAWA 1983

まさに原田知世という存在を世に知らしめた同作品をあらためて観賞すると、彼女の圧倒的な「フレッシュさ」と「ピュアさ」に当てられ、当時の"時の人"になったのも頷ける。映画デビュー作なのだからフレッシュでピュアなのは当然という意見はもっともなのだが、作品の中ではひと際それらの要素が輝き、「フレッシュ」「ピュア」を具現化した存在なのだ。

改めて記述するのも気が引けるが、同作は筒井康隆のジュブナイルSF小説を名監督・大林宣彦が映画化したもので、大林監督の「尾道三部作」の2作目に数えられる日本映画史に残る名作。ひょんなことからタイムワープする能力を得た女子高校生・和子(原田)が、その能力をきっかけに愛と悲しみを知る青春物語だ。

広島・尾道の美しい情景の中で繰り広げられる若者の青春とミステリアスな展開は独特の世界を紡いでおり、観る者も一緒にタイムトラベルしているような気にさせる画作りは大林監督の他の追随を許さぬセンスが感じ取れる。

そんな大林監督の世界観の中で、原田の「フレッシュさ」「ピュアさ」は"美しい情景"にも"ミステリアスな展開"にも引けを取らないほど強い主張を見せている。もちろん、監督の意図的な仕掛けの要素も多分にあるだろうが、原田の中にそれらが存在しなければまず無理であろう。

(C)KADOKAWA 1983

しかも、昭和の地方都市の風情のある地域が舞台であるため古めかしさがあって当然なのだが、原田の存在感がそれらを感じさせない。(デビュー作なので当然だが)芝居が特別上手いわけではない。しかし、画面の中を動き回る彼女から目が離せなくなる。それは「フレッシュさ」「ピュアさ」も一定以上超えると、逃れ難い誘惑となって観る者を引き込むからだ。

そしてその存在感は、風景の中に居ながらもどこか馴染んでいない少し浮き出て見える効果を生み出し、劇中の時間と現実の時間の間の存在のような雰囲気を作り上げている。存在がまさに次元を渡る「時をかける少女」となっていたからこそ、ハマり過ぎなくらいハマったのだろう。原田だからこそヒロインが務まったし、原田以外では務まらなかったに違いない。

「フレッシュさ」「ピュアさ」からなる原田の圧倒的な存在感を、40年経った今、あらためて堪能して欲しい。

文=原田健

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放送情報

映画「時をかける少女」
放送日時:2022年10月1日(土)20:30~
チャンネル:ホームドラマチャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります。

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